日本初のコンテンポラリー・クラシックラジオ局として2007年に開局した「OTTAVA」(サイト)ののべ登録数が100万を超えた。OTTAVAの立ち上げと運営に従事してきた三村孝成氏(東京放送ホールディングス グループ経営企画局 経営戦略部 担当部長 兼 OTTAVAゼネラルプロデューサー)に聞いた。
(聞き手は本誌編集長、田中正晴)

100万というのべ登録数をどう評価するか。

三村 100万というのは、日本のクラシック愛好者人口の目安であり、クラシック局としては象徴的な数字である。一方で、英国ではBBCのクラシック専門ラジオ放送が200万人に対し、我々がパートナーシップを結びながらノウハウを勉強した英国ロンドンに拠点を置く「クラシックFM」は600万人のリスナーがいる。OTTAVAも、クラシック音楽をシンボルにした上質なミュージック局を目指している。何百万という単位でリスナーが増えていくというのが目標であり、100万は通過点に過ぎない。

このスタイルのラジオ局を立ち上げた理由は。

三村 世界的に見て、ミュージック局の中で数が増えているのがコンテンポラリー・クラシックラジオ局である。理由は様々あるが、その一つは民放として事業が成立するために最も重要なリスナープロフィールが上質であることである。コンテンポラリー・クラシックラジオ局は、高所得者が多く、アートやカルチャーなどへの感度の高いリスナーが多いことは、世界的にも様々な調査で実証されており、広告主のニーズに合致する。

海外にも同様の局があるが、音に違を感じる…。

三村 広い帯域をとっているわけではなく、パソコンなどでクラシック音楽を聴くときにちょうどよく聞けるようにわが社の技術陣が様々な工夫をし調整し、この音でいこうとみんなで決めた。音をいじることで、1聴取当たりの滞在時間が変わる。我々の調査では、OTTAVAは、平均で1聴取3時間と非常に長いことが証明されている。

インターネットによる情報提供などの取り組みは。

三村 例えば聴いて気に入ったら曲名が確認でき、クリックすると楽曲を購入できたり、音源のダウンロードができたりするなど、リスナーの利便性向上になるものは早くからやっている。iPhoneのアプリはすでに出しており、androidアプリの開発も進めている。ほぼすべてのスマホに対して公式アプリを用意することになる。

スポンサーの動向はどうか。

三村 実は面白いことが起こっている。「メディアのOEM供給」が始まりだした。例えば、防音対応の「奏でる家」を提案する大和ハウス工業は2011年3月よりTwitterアプリ「デスクトップジーヴォ」上に「クラシック・カフェ」を開設、OTTAVAの番組「Caffe bleu」を聴くことができるなど様々な使い方を始めた(発表資料へ)。

 法律事務所MIRAIOは「MIRAIO RADIO」という、とてもおしゃれなインターネットラジオのホームページを立ち上げた。無印良品なども自社のホームページでOTTAVAの番組が聴取できる。

 OTTAVAを活用すれば、企業のホームページを音でリッチさせることができる。視覚によるリッチ化よりも音によるリッチ化の方がホームページの滞留時間を伸ばす効果が期待できる。しかもOTTAVAは毎日番組制作し放送しており、OEM供給先の音楽番組も毎日更新できる。著作権を処理してこれだけの上質な音楽コンテンツを毎日制作することは一般企業ではできない。従来のラジオ放送はCMを入れてどれだけリーチしたか、が広告主の評価基準だった。インターネットと一体化し著作権の包括処理を行いコンテンツ化することで、番組はラジオ的だがスポンサーが様々な使い方をできるようになった。

OTTAVAはどういう方向を目指すのか。

三村 OTTAVAは、日本の音声メディアがどうなっていくべきかの「プロトタイプ」にしたいと考えてきた。今音声メディアに必要なのはソーシャルメディア対応であり、シェアできるように番組をコンテンツ化することだろう。OTTAVAの番組は権利処理をしており、アーカイブ化できる。OEM供給という企業に対するオープン化がすでに始まっている。今後の音声メディアにとって重要なことはSNS対応であり、一般ユーザーに対してオープン化していくことだ。OTTAVAはそれができるメディアだと考えている。