プレゼンは「敵役」を登場させると盛り上がる

スティーブ・ジョブズのプレゼンの魅力の一つは、わかりやすさ。今回紹介する製品は、何がすごいのか、何が魅力なのか、わかりやすく説明していきます。その手法としてよく使ったのが、“敵役”を登場させることです。連載5回目の今回は、1回目で紹介したプレゼンの9つの要素の中から「4 敵役の登場」の英語表現を紹介しましょう。

1 冒頭で注意を引く
2 経緯を報告
3 ロードマップを描く
4 敵役の登場
5 ヒーローの登場
6 デモ
7 多角的にアピールする
8 目標と数字の提示
9 効果的に締めくくる

◆ライバルの問題点を提示する

The problem is that they're not so smart and they're not so easy to use.

問題は、これら(スマートフォン)はあんまりスマートでも、使いやすくもないことです。

MacWorld San Francisco 2007 Keynote Address(2007年1月9日)より

ジョブズはプレゼンの中でストーリーを展開することで、聞き手を話に引き込んでいきます。その方法の一つとして、まず聴衆の敵役となりうる「問題点・製品」を登場させます。iPhoneの発表では、それまでにあった他社の使い勝手が悪い「スマートじゃないスマートフォン」を提示しました。敵の登場によって解決すべき問題点が明らかになり、聞き手を救い出してくれる新製品に必要な機能が浮かび上がってくるのです。

◆英語表現

The problem is that ~.
問題点は~です。

写真撮影:三井公一

 The problem is that ~.のあとにくるのはS+Vの型。逆にメリット伝えるならばThe advantage of ~ is that… のような表現も可能です。I’ll tell you the problem of ~ やThere is a problem. というような言い方もできますが、ジョブズのようにThe problem is と「問題は」を主語にもってくると、話のポイントがわかりやすく、日本人にも発声しやすくなります。ほかにWhat’s wrong with ~.(~の何が悪いか)もよく登場します。意味が近い言葉ながらissueは「課題」や「争点」の意味あいが強く、ただ“問題だ”というにとどまらず、すぐに取り組むべきというニュアンスがあります。


◆応用例

The problem is that users have to click many times to get the information.
問題点は、ユーザーが情報を取るまでにたくさんクリックをしなければならないことです。

The problem is that the batteries are too heavy.
問題点は、バッテリが重すぎるということです。

The problem with those products is that we need too many people to operate them.
こうした製品の問題点は、それを扱うのにたくさんの人が必要だということです。

上野 陽子(うえの・ようこ)
カナダ・オーストラリアに留学ののち、ボストン大学コミュニケーション学部修士課程でジャーナリズムを専攻。通信社の国際金融情報部、出版社にて国内海外の作家・実業家の担当、海外エージェントとの交渉や、シリコンバレー、欧米デジタルシーンの取材など経てフリーに。海外通販会社の執行役員を経て、諸媒体の翻訳・執筆・プロデュースを手掛ける。著者に、『名作映画いいとこだけの英会話』(ダイヤモンド社)、『気持ちが伝わる英会話のルールとマナー』(日本実業出版社)、『とっさに頼れるオフィスのスマート英語』(実業之日本社)ほか多数。
スペースアルクにて、バイリンガルで日本を楽しむ『日本のキホン』好評連載中!