通信インフラの不安、市場の特性や雇用環境の違い―。アジアで業務システムを導入し運用していくなかで待ち受けるのは、日本とは全く異なる状況だ。アジアならではの難しさに直面した日本人IT担当者は、何を考えどう工夫して乗り越えたのか。まずは即戦力としてアジア拠点で戦っている、彼らの姿を紹介しよう。(文中敬称略)

ファミリーマート●ゼロからのIT環境へ手探り

写真1●ホーチミン市におけるファミリーマートの第1号店
写真1●ホーチミン市におけるファミリーマートの第1号店

 おびただしい数のバイクが喧騒のなかで駆け巡るベトナム・ホーチミン市。1台のバイクに、家族総出で3~4人乗りをするのは当たり前。そんな同市の中心部である「District1」の一角にファミリーマートのベトナム第1号店がある(写真1)。同店の2階部分が、ファミリーマートと現地企業の合弁であるビナ・ファミリーマートの本部。ベトナムでの出店戦略と業務を統括する“アジア最前線の基地”だ。

写真2●ビナ・ファミリーマートでITを担当する佐藤隆雄ゼネラルマネジャー
写真2●ビナ・ファミリーマートでITを担当する佐藤隆雄ゼネラルマネジャー

 第1号店の出店から2年後、2012年1月には18号店目のオープンにこぎ着けた。出店ペースをさらに加速させ、2015年までにホーチミン市で300店まで増やす野心的な計画が着々と進む。それをシステム面から支援するのが、ビナ・ファミリーマートでITを担当するゼネラルマネジャー、佐藤隆雄である(写真2)。

 「システム導入が間に合わないから出店計画を遅らせるという事態だけは、絶対に避けなければならなかった」。佐藤は、苦闘の日々をこう振り返る。佐藤がベトナムのホーチミン市に赴任したのは、2009年6月のこと。第1号店の出店予定は、同年11~12月だった。

 実質的に半年間も準備期間がないにも関わらず、「店舗運営に必要なIT環境が何もなく、ホーチミンのネット環境なども分からない状態からのスタートだった」。佐藤の奮闘は、このゼロの状態から始まった。