最新スペック端末の開発とシェア争いでデッドヒートを繰り広げる韓国勢や台湾勢、激しく追い上げつつある中国勢。そして、これら海外メーカーの狭間で遅れまいと必死の国産勢ー。この1~2年続いてきたスマートフォン市場はこうだった。だが先月末に開催されたICT関連の展示会「Mobile World Congress 2012」(MWC2012)の様子は少々違った。世界初のクアッドコアCPU「Tegra 3」とLTEに対応した試作機を、富士通が他の日本メーカーに先駆けて実機展示(関連記事)。日本のメーカーも最新・最高のスペックを備えたスマートフォンを海外メーカーに匹敵するスピードで開発できることを見せつけた。果たしてこれが、2012年に国産勢が反転攻勢していく狼煙となるのか。同社の松村孝宏 統括部長に製品化の狙いや開発状況を聞いた。

(聞き手は高槻芳=ITpro


いつ頃からTegra 3対応端末の開発に着手したのか。

写真1●富士通 松村孝宏 モバイルフォン事業本部マーケティング統括部長
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 スマートフォンにTegra 3を採用するのを決めたのは1年ほど前だ。それまで社内には「クアッドコアCPUは時期尚早。2012年中はデュアルコアCPUを推していくべき」といった声も大きかった。だが一方で「2012年夏から遅くとも年末までに、多くのメーカーがクアッドコア対応のハイエンドモデルを出してくるだろう」との予測も社内にあった。

 実際この予測は、米NVIDIAから「Tegra 3」の開発の進捗を聞き、同社と米Googleが接近していく様子を見るうちに確信に変わった(編集部注:NVIDIAの「Tegra 2」は、タブレット用OSであるAndroid 3.0の事実上のリファレンスデザインとなっていた)。それで当社もクアッドコアCPU搭載機の提供に動き始めたのだ。Tegra 3を採用する他メーカーと同様、2012年夏をめどにリリースできるよう開発している。

他の国産メーカーに先んじてクワッドコアCPU採用に踏み切った理由は。

 ちょっと逆説的に聞こえるかもしれないが、クアッドコアCPUそのものににこだわっているわけではない。各社がハイエンド製品からローエンド製品までクアッドコアを採用するようになるのは、まだまだ先になる。国内市場シェアの拡大だけを考えるなら、ミッドレンジやローエンドのデュアルコア端末に力を入れる方が順当だろう。それでも当社がクアッドコア端末の開発を急いでいるのは、そうすることがスマートフォンメーカーとして生き残っていく上で必要不可欠と考えているからだ。