この連載では、Facebookを中心とした「ソーシャルメディア」を企業でどのように導入するかをテーマにしている。前回は「ソーシャルメディアと評判作り」について「ソーシャルメディアを使うだけで『評判になる』」はありえないことを説明した。

 この連載で何度も説明しているが、ソーシャルメディアは道具である。「まず、真摯にお客さまや社会に貢献することを考えて、それを愚直に実施する。この行為が評判となれば、ソーシャルメディアの増幅器効果でさらに広がっていく」といったことが本質なのである。

 ソーシャルメディアはあくまで「道具」にしか過ぎない。使う人のリアルな仕事の優劣によって価値が変化する。「使う人がダメならソーシャルメディアもダメ」「使う人が優れていれば、ソーシャルメディアでさらに良くなる」ことを理解し、うまく活用することが大事だ。

 今回は「ソーシャルメディアの利用促進」がテーマである。これは慎重に考える必要がある。やり方を失敗すると、「利用が促進されない」だけでなく「ソーシャルメディアは役に立たない」という評価が定着するからだ。

 特に危険なのは「社内での無目的な利用」だ。社長や役員のような役職の高い、影響力を持った人間が「ソーシャルメディアを使って、何か新しい良い方法を考えてみたらどうか」などと言うケースが多いが、これが非常に危険だと筆者は考えている。

 ソーシャルメディアは「コミュニケーションの道具」である。だから目的を明確にして使わないと、学生時代や社外・社内の人間同士のコミュニケーション、噂話、他愛ないやりとりに終始し、どうしても最後は「好き嫌い」の人間関係の問題に行き着く。

 要は、「良い人間関係はより良い関係に増幅し、悪い人間関係はより悪い人間関係に増幅」されてしまうということだ。皮肉なことに、「ソーシャルメディアを使え」「ソーシャルメディアで関係を深めろ」と言えばいうほど、人間関係が悪くなって利用されなくなるのだ。

 社長や役員は軽い気持ちで、「良かれ」と思って言っているだろうが、言われた方は何とか利用を促進しようと必死になる。若手が始めれば、中堅も始める。「楽しい」という噂が広がれば課長や部長も始める・・・これが人間関係の問題に波及するから注意してほしい。

 では、事例を使って説明しよう。