本連載は、2010年7月から日経情報ストラテジーに掲載されたものです。2012年の現在でも通用するヒントを含んでいるため転載します。

 多くのマーケッターやウェブ担当者にとって、ヤフーやグーグルといった検索サイトから、確度の高い見込み客を自社のサイトに誘導することは、もはや当たり前のことになった。このため、検索サイトのエンジンのアルゴリズムを類推して自社のサイトを最適化するSEO(検索サイト最適化)や、SEM(検索エンジンマーケティング)の一種であるリスティング広告に多くの労力や費用を投じるケースは珍しくない。

 その一方、一般企業サイト内の検索エンジンの品質や精度については、それほどの注意が払われていないケースが意外に多い。だが一般企業サイトのような販売の“現場”でも多くの検索が行われている。

 例えば、おもちゃを販売している企業のウェブサイトが、SEOを実施し、「おもちゃ」や「玩具」といった検索キーワードに対して検索サイトで上位に表示されるようになったとしよう。こうして多くの消費者がこのサイトを訪れたとしても、ここから先は、サイト内の検索機能を活用して、欲しい商品を探してもらうことになる。ところが、そうしてもなかなかお目当ての商品が出てこない、という経験が皆さんには無いだろうか?これでは検索サイトから見込み客を引き寄せても、販売の機会を逃してしまう。

 一般企業サイト内の検索機能に多い問題の1つは、商品に対して、ひも付けられたキーワードのバリエーションが乏しすぎることである。例えば、見込み客が線路を組んで電車を走らせる「プラレール」というおもちゃを探すシーンを想定してみよう。「プラレール」というキーワードしかひも付けられていないとき、「鉄道」「電車」といった検索に対しては、「該当無し」と表示されてしまう可能性が高い。だが実際は見込み客が「プラレール」で検索するとは限らない。

 商品によっては、検索サイトから比較サイトや電子モールなどを経由して購入に至るケースもある。比較サイトや電子モール内の検索エンジンで、自社の商品ができるだけ上位に掲載される工夫が必要だ。

 今後は、Twitter(ツイッター)などソーシャルメディア内の検索エンジンにおいても、自社・商品関連のTweet(つぶやき)やフェースブックのファンページなどが上位に表示されるような最適化の必要が生じるだろう。

 例えば、「プラレール」を子どもへのクリスマスプレゼントとして売りたい場合、「プラレール」だけでなく「クリスマス」「Xmas」「プレゼント」といった言葉を含んだTweetをすることで、クリスマスプレゼントのヒントを得ようとTwitterを検索する人に、自分のTweetを見つけてもらいやすくなる。

泉 浩人(いずみ ひろと)氏
ルグラン代表取締役
泉 浩人(いずみ ひろと)氏 慶應義塾大学経済学部卒。米ジョージタウン大学MBA。三井銀行(当時)、米オーバーチュア(同)を経て、2006年にデジタルマーケティングに特化したコンサルティング型代理店ルグラン(www.LeGrand.jp)を設立。著書に「SEM成功の法則」(ソーテック社刊)、「クリック!指先が引き寄せるメガチャンス」(監訳・イーストプレス刊)など。