本連載は、2010年7月から日経情報ストラテジーに掲載されたものです。2012年の現在でも通用するヒントを含んでいるため転載します。

 「知で知を洗う」というタイトルがついた本コラムをお読みの皆さんに、今さら勉強の必要性を説く必要など無いだろう。だが勉強法については少し忠告させていただきたい。手当たり次第にあちこちのセミナーや勉強会に参加しても、間違った勉強法では、正しい情報や知識を身につけることは難しい。

 例えば様々な企業が主催する無料セミナーでは、スポンサーの人が講師やモデレーターを務めることが多い。こうしたセミナーでは、スポンサーに都合の悪いテーマや情報が取り上げられることは少ない、ということは言わずもがなであろう。

 一方で、米国で開催されるad:techやSearch Engine Strategiesといった2~3日で10万円以上の参加費を取られるネットマーケティング関連のイベント、セミナーにはやはり相応の価値がある。

 もちろんこうしたイベントにもスポンサーは存在する。だが、個別のセッションにスポンサーが関与することは無い。一部のスポンサー付きセッションについては、必ずその旨が明示され、通常のセッションとは明確な線引きがなされている。

 また、各セッションの講師やモデレーターは、自薦・他薦で公募してきた候補者を、業界第一人者などで構成される理事会が、経歴や専門分野を考慮しつつ、厳しく選考する。選ばれた人たちとは契約書が交わされ、それぞれのテーマについてプロとして中立・客観的な立場から話をすることが求められ、自社の宣伝をすることは禁止される。

 また、各種コンサルタントやベンダーが紹介する「成功事例」を聞く際にも注意が必要だ。成功事例に触発されてまねてみたものの、思うように効果が上がらないといった話はよく耳にする。

 先日もあるクライアントと話していたら「セミナーで、リスティング広告では3位に表示させた時がもっとも効果が高かったという話を聞いた。ついては、ウチの広告もすべて3位を狙って掲載してほしい」という依頼を受けた。

 筆者の知る限り、掲載順位と広告の効果には特に明確な相関関係はない。キーワードの選び方や広告文の書き方が悪ければ、何位に掲載されようとも効果は上がらない。より多くのクリックを獲得し、受注が増えるようにするためには、効果の高いワードを見極めたうえで1位に表示させられるよう取り組むべきなのである。

 誰かが語る成功事例には、そのプロセスや結果について具体性があるだけに、ついつい信じたくなるのは無理もない。だが本当に大切なことは、その背景にある普遍的な成功の法則は何か、を考えることではないだろうか。

泉 浩人(いずみ ひろと)氏
ルグラン代表取締役
泉 浩人(いずみ ひろと)氏 慶應義塾大学経済学部卒。米ジョージタウン大学MBA。三井銀行(当時)、米オーバーチュア(同)を経て、2006年にデジタルマーケティングに特化したコンサルティング型代理店ルグラン(www.LeGrand.jp)を設立。著書に「SEM成功の法則」(ソーテック社刊)、「クリック!指先が引き寄せるメガチャンス」(監訳・イーストプレス刊)など。