「Lean Startup」の方法論を実践している企業がある。レシピ共有・検索サービスを提供するクックパッドだ。

全社員がリース氏の著書を入社前に読む

 クックパッドでは、新入社員に対してエリック・リース氏の「Lean Startup」を入社前に読むことを推奨している。もし入社前に読むことができなかったときには、入社後の2日を同書を読む時間にあてることができる。さらに、先輩社員が同社での活用方法をレクチャーしたり、全体会議で成果を報告したりというほどの入れ込みぶりだ。

 同社の取り組みは、佐野陽光社長が「自分の言いたかったことが、うまくまとまっている」という理由から社員に薦めたことが発端。社長が普段から繰り返し話している内容に近いという理由もあり、社員の多くが「引き込まれるように」(石田忠司Happy Author部副部長)同書を読み込んだ。それだけでなく、新サービスの開発陣がその方法論を実践し始めている。社内では「結果だけでなく、本を読んだけだと分からない部分や本には書かれていない部分、実際はこうやるんだというノウハウを共有している」という。

“作りたい気持ち”を抑える

 このうち、「読んだだけだと分からない」ことの代表がスピード感だという。「もともと“速く”と言われてきたが、Lean Startupの方法論を実践するようになって、さらに加速した」(石田氏)。

 Lean Startup方法論の導入による最大の効果は、「実物主義」にこだわらなくなったことのようだ。同社に限らず、モノ作りの現場では実物を重視しがちである。作り手による「完璧な状態まで作ってから試してもらいたい」という主張だ。マネジメント側としても「そこまで言うなら、実物を見てから判断しようか」となる。

 同社では、Lean Startup方法論によって、この考えを抑え込んだ。実際にコードを書く前のタイミングでも、「誰かに説明する」「チラシを作って見せる」などして、仮説が正しいかどうかを検証するように心がけている。これによって、新しいアイデアを思い付いたタイミングからすぐに軌道修正するというわけである。