2011年春から赴任しているバージニア州は、森林に囲まれた地域だ。春になると一面が新緑であふれ、秋には紅葉で真っ赤に色づき、大変美しい景観を創り出す。バージニア州北東部のポトマック川沿いはアレクサンドリア、アーリントンなどの歴史ある街並み。州の西方には巨大なルレイ鍾乳洞、シェナンドー国立公園などの大自然が広がっている。

 一方、NTTアメリカが拠点を構える同州のフェアファクス郡は、ワシントンDCの中心部まで車で20分程度と交通の便が良いという特徴もある。近年この地域は、政府関係機関を相手にしたIT事業の急速な伸びが目立っている。2012年上期に、政府機関用のクラウド利用のセキュリティガイドライン「FedRAMP」の運用が始まることもあり、米国連邦政府に限らず、世界銀行、IMFなどの国際機関や、CIA、FBI、軍関連組織などがITシステムを外部の事業者にアウトソースする動きがさらに盛んになりそうだ。

IT企業らがこぞって設備投資を拡大

 こうした動きに対応して、現地で受注を競い合っているのがアクセンチュアやEDS、SAICといったSI企業。土地柄か、軍関連組織の案件ではノースロップ・グラマンなどの軍需メーカーと競うこともある様子だ。

 これと連動してデータセンター需要も拡大している。当社をはじめ、データセンター設備の卸売り事業者として世界最大のデジタルリアリティトラストや、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックなど大手のクラウド事業者らが、ワシントンDCの近郊に設備を新設、増設している。

 当然、これらの動きは、他の業界にも波及している。クラウド事業者を設備面で支えるIBM、EMC、HP、シスコなども、ワシントンDC近郊に事業所を開設し、需要増への対応を強化している。我々も彼らの取引先の1社として、ITアウトソーシングやクラウドの新サービスを開発中だ。

 こうしたICT業界全体の活況の影響から、このエリアでのITエンジニアの求人案件は急増している。そのためかDC周辺に転居してくる人も多くなっている。

 米国全体を見れば、不況による不動産価値の下落が暗い影を落としているが、それに反して、バージニア州北部では値上がりしている不動産が目立つ。賃貸物件を見ても、貸し手優位な状況で賃料が決まっている様子だ。

 数年前は空き地だった地域にも、大規模なビジネス街やショッピングモールが次々と建設されている。これまで直通の地下鉄路線がなかったDC中心部とワシントン・ダレス空港の間には、約40kmに及ぶ新線の建設が進行中である。バージニア州の開発ラッシュはしばらく続くもようである。

今井 啓介(いまい けいすけ)
2011年にNTTアメリカ エンタープライズソリューション事業部、プロダクトエンジニアリング部門マネージャーとして赴任。現在、NTTコミュニケーションズと海外現地法人との共同によるグローバルクラウドサービスの開発プロジェクトを統括している。2004年から4年半の米Verioへの赴任に続き、今回が2度目の米国赴任となる。プライベートでは、フェイスブックを通じて現地の友人を増やしながら、週末はチェサピーク湾へ足を伸ばし、趣味のウインドサーフィンを楽しんでいる。