「便りがないのは元気な証拠」「No news is good news」といったように、日本のみならず欧米でも連絡がないことをよいことだととらえる慣用句は多い。これは、「連絡をよこせないくらい忙しくしているからで、もし病気にでもなったら連絡がくるだろう」という思いからこのように言われるようになった。

 しかしこれをPM(プロジェクトマネジャー)が真に受けて、そのままプロジェクトに当てはめてはいけない。特に協力会社に作業を依頼した後、何も言ってこない状況ではなおさらいけない。「便りがないのは、問題ないという証拠だ」などと高をくくっていたために、痛い目にあったPMは少なくないからだ。

2度目のPMを務めたN君のケース

 SIベンダー所属のN君は、ユーザー企業A社の経理システム刷新プロジェクトでPMに任命された。今回のプロジェクトでPMを担当するのは2度目になる。前回のプロジェクトは、協力会社の頑張りもあって、QCDのいずれも目標を大きく上回って成功した。そこでN君は今回のプロジェクトでも同じ協力会社を採用しようと考えていた。

 ところが、N君が体制図をA社に提出すると待ったがかかった。A社の系列会社でソフトハウスのB社があり、今回はこのB社を採用してほしいという強い要望が出たのだ。

 今回のシステムはJavaで開発することになっていた。B社はVisual Basicが得意な会社でJavaについての実力は未知数。そこで、N君はB社に対して今回の案件を説明し一緒に仕事をしていけるのかどうかを確認した。

 B社からの回答は「A社からの仕事であればJavaでも大丈夫だ」というものだった。心配なN君は「本当にJavaで開発できるのですか?開発経験はどのくらいあるのですか?」といったことを何度も問い合わせた。しかしB社からの回答は「大丈夫です。信頼してください」と変わらなかった。この強気の回答とA社からの強い要望から、N君は今回、協力会社としてB社を採用することにした。

 今回のプロジェクトでは、要件定義や基本設計はN君のSIベンダーで行い、詳細設計フェーズから単体テストフェーズまでを協力会社B社に一括発注することになった。詳細設計フェーズから単体テストフェーズまでの作業はB社の拠点で行う。