PM(プロジェクトマネジャー)が協力会社に作業を依頼した後で、協力会社の担当者から「(その作業をこなすのが)難しい」「(依頼された作業を仕上げるのは)厳しい」といった報告を受ける機会がある。

 このときPMはつい「無理だ、できないとは言っていない」と、報告内容を都合よく解釈してしまいがちだ。そのため、PMは「難しいかもしれないけれども頑張ってほしい」「厳しいことは重々承知しているが何とかやりきってほしい」といった言葉でその場をやり過ごしてしまう。

 しかしそれではいけない。PMが都合よく解釈してその場をやり過ごしてしまうと、プロジェクトの遅延といった問題に直面することになるからだ。

100人月規模のプロジェクトを担当したSさんのケース

 SさんはSIベンダーJ社に入社して10年目の中堅エンジニア。周りからは理論派として知られるエースだ。そんなSさんがあるプロジェクトでPMを担当することになった。そのプロジェクトは、放送事業を営むユーザー企業のシステム更新案件で、開発規模は100人月程度だった。

 ただし、このプロジェクトは、ユーザー企業がRFP(Request For Proposal)を公開した時点で、難航することが予想された。限られた予算と期間の中で、技術的に難しい課題を解決しなければならないからだ。Sさんは「こういうプロジェクトだからこそ自分が抜擢されたのだ」と気を引き締めた。

 Sさんはこのプロジェクトを一緒に進めていく協力会社として、入社以来お世話になっているA社を選んだ。A社もJ社との長年のつきあいもあるため、厳しいプロジェクトになると分かっていながらも受託。ベテランSEのLさんを主担当者に割り当てたのだった。

 そんな中、プロジェクトはスタートした。最初の難関は要件定義・基本設計フェーズだ。ここで技術的な課題の解決方針や解決策を固めることが求められた。幸いLさんをはじめとする協力会社の担当者のがんばりで、技術的な解決策を打ち出すことができた。

 これを受けてSさんは「これで詳細設計フェーズ以降の作業を進められる。後はうまくいくだろう」と一安心。ステークホルダー向けの中間報告会でも次のように報告した。

 「技術的課題の解決にメドが立ったのでご安心ください。あとは時間との勝負です。幸い今回は優秀な協力会社も一緒です。このままの調子でいけば多少は忙しくなるかもしれませんが、納期を守ることができそうです」