NHK(日本放送協会)は2012年2月11~14日に、「第41回番組技術展」を開催した。NHKの番組制作や放送の現場から生まれた放送技術や放送関連機器を視聴者や放送関係者に公開した。

 東日本大震災の発生を受けて、総務大臣はNHKの2012年度事業計画に対する意見において、「全国の放送局において災害情報や避難情報などをきめ細かく提供する体制を構築すること」と要請した。NHKの松本正之会長も2012年1月24日の理事会で、鹿児島放送局の災害情報強化の取り組みについて報告した視聴者事業局に対し、「防災情報を早く正確に届けることができるよう、早期に全国展開を目指して取り組んでほしい」と述べた。今回の番組技術展でも、災害報道の強化に関する展示が目立った。

全国の放送局で利用できる防災情報インフラ

 放送技術局 メディア技術センターと編成局、技術局は共同で、地域の避難所や河川など防災に関する情報を提供する仕組みを展示した。自治体などから発信された情報を自動的に処理して、データ放送やホームページで公開するもので、全国の放送局で利用できるという。避難情報などは、マルチメディア振興センターがサービスを提供する「公共情報コモンズ」を活用して入手する。河川水位・雨量などの情報は、各地の地方整備局から提供を受ける。NHKの防災情報配信設備は、主にTVCML(TeleVision Common Markup Language)のフォーマットで情報を受け取る。これをデータ放送用のBMLデータやホームページ用のHTMLデータに変換し、集配信装置に配信する。

 自治体には公共情報コモンズを利用していないところもあるため、現在は全国の自治体すべての避難情報を配信できないという。ただし「河川の水位情報は来年度の早い時期により多くの局で把握できるようになる」(説明員)としており、今後NHKが提供できる地域は順次増えていく見込みだ。今後サービスの強化に努めるという。

位置情報から地名や地図を自動作成

 仙台放送局は、「位置情報自動スーパー装置」を展示した。中継車やヘリコプター、天気カメラなどから位置情報をリアルタイムで取得し、自動で地名や地図のスーパーを出力する。例えば災害発生時にヘリコプターで上空から撮影した映像に地名や地図のスーパーを自動で追加できる。「これまでは地図スーパーなど事前に用意した素材を番組進行に従って利用する必要があった」という。仙台放送局は、「なるべく早くこの装置の利用を始めたい」としている。

停電でも3日間はカメラを稼働できる電源装置

 ロボットカメラ用ハイブリッド無停電電源装置を展示したのは札幌放送局である。市販の小型発電機に外部燃料タンクを追加し、長時間運転を可能にした。災害などで停電になってもロボットカメラやFPU装置に電力を供給できる。総電力400ワットの場合で、ロボットカメラとFPU装置を3日間稼働させて、映像を送り続けることが可能という。寒さの厳しい環境でも安定した発電を確保でき、報道室の伝送設備の非常用電源としても使えるなど、幅広い応用ができるとしている。「今回展示したのが完成したばかりの1号機。今後、色々な場所に設置していきたい」としている。

天気カメラの映像に地名を自動表示するシステム

 札幌放送局は、天気カメラ地名表示システムも展示した。このシステムは、天気カメラからのデジタル信号データ部分から設置場所の地名情報を取り出して、映像とともに表示する。港の岸壁や海など似たような天気カメラの映像を複数使用する場合でも、取り違えることなく設置場所を把握できる。このシステムは、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)と共同で開発した。北海道管内の天気カメラへの導入を予定する。

 青森放送局は、ゲーム機「Wii」のリモコンのCMOSセンサー(赤外線センサー)を利用したCG描画合成装置を開発した。棒の先端に赤外線LEDを取り付けて、その動きを固定設置したWiiリモコンに認識させることで、線などをスクリーン上に表示できる。例えば天気予報の際に低気圧の進行方向を示す矢印をスタジオのスクリーンに書き込むことができる。特長として、「低コスト」「設置が容易」「様々なモニターサイズに対応」を挙げる。「2~3カ月以内に利用を開始したい」という。

操作性の高いディスプレイなど

 福岡放送局は、タッチパネル式でタブレット端末のように操作できる大型ディスプレイを展示した。テクノアートと共同開発したという。このほかに、電話回線が使用不能となった場合にメールで制御コマンドを送信してロボットカメラを操作できる「メールdeロボカメ」(松山放送局が松浦機械製作所と共同開発)や、アニメにおけるデータ放送と通信の連携サービス(放送技術局 メディア技術センターと編成局が展示)なども成果として披露された。