東日本大震災直後に広い範囲で電話が不通状態に陥ったことは記憶に新しい。電話がつながらなくなったのは、局舎が津波で流されたり、回線が切れたりしたことに加え、通信事業者が輻輳を避けるために発信規制をかけたことによる。

 筆者は震災発生時に東京のオフィスにいたが、直後は固定電話も携帯電話も全く使えず、外部との連絡手段として残ったのは電子メールだけだった。多くの企業は、災害発生時の従業員の安否確認や緊急対策の指示を電話で行うことを想定していたはずだが、肝心なときにそれらは全く機能しなかったわけだ。

内線電話にも発信規制の影響が

 こうした状況下では、企業の内線電話は比較的うまく機能する。閉域網などを使ってネットワークが構成されているため、通信事業者による発信規制の影響を受けないからだ。実際、東日本大震災でも、内線電話はつながったという例をいくつか耳にした。被災地で設備が破壊された拠点などはどうにもならないが、それ以外の拠点なら内線電話はつながる。

 ただ、内線電話も全くつながらなくなってしまった例がある。近年導入が増えている携帯電話網を使ったFMC(Fixed Mobile Convergence)サービスに切り替えていた企業だ。ここで言うFMCサービスは、一般の携帯電話から内線番号で電話をかけられるサービス。オフィス外でも携帯電話から内線番号で電話をかけられるうえ、PBXをユーザー自身が所有する必要はない。

 ところが、これらのサービスはユーザーからは内線電話に見えても、実体としては携帯電話事業者の網を使う。このため通信規制や通信障害の影響を受け、内線が不通になった。

通信事業者依存を見直す動き

 こうしたことから、広域災害が発生しても通話できる強固な企業内電話ネットワークを求めるユーザーが出てきている。通信事業者による運用への依存度が高い公衆網の電話では、大規模災害時に機能停止に陥る可能性があり、BCP(事業継続計画)として不十分という考えである。

 震災時には代替手段として、電子メールやTwitterなどのソーシャルメディアを利用した企業は多い。インターネット経由でWeb会議を利用するといった方法もあった。

 ただ、安否確認や緊急指示といった目的においては、電話に対する需要は根強い。その理由は、発信および受信が極めて容易であること、そしてリアルタイムで相手の状況を把握しながら会話ができることにある。

 また、従来通り閉域網などを使って内線ネットワークを構築していれば、BCPの観点ではFMCサービスよりも優れていることになる。とはいえ、移動した先からも内線電話をかけられる利便性は、もはや無視できない。

 いま求められているのは、FMCサービスの利便性を確保しつつ、大規模災害に耐え得る可用性の高い電話系ネットワークのソリューションである。インターネットやスマートフォンなど多様なテクノロジーを駆使した、電話系ネットワークに対する新たな考え方が必要となっている。

 こうした背景から、今回は大規模災害でも停止しない電話系ネットワークの再構築プロジェクトを想定し、ベンダー各社に提案を募った。

ポイントはココ!
■モバイルの利便性を保ちつつ、内線ネットワークの可用性を確保
■ベンダーのアイデアを引き出し、スマートフォンやクラウドなど最新の技術/製品/サービスを徹底活用