前回紹介したように、北陸コカ・コーラが発注推奨量を決めるために利用した「発注直前の在庫量」は、「今、ビジネスの最前線で何が起こっているか」を示す真実のデータだ。

 同社は当日の状況を示す新鮮なデータを、発注業務担当者に届けることで在庫日数の削減という効果を出した。その中核にあるのは、鮮度の高いデータを、利用者の求めに応じて即座に提供する高速なDWHだ。

「遅い」「古い」からの脱却

 これまでも基幹系システムのデータ活用を目指して、DWHの構築に取り組む企業はあった。しかし、真実のデータをつかみ、ビジネスに貢献できているDWHはそう多くはないだろう。

 食品トレー最大手のエフピコはDWHを再構築し、5億件のデータを数分で処理できる性能を手に入れた。再構築のきっかけは、2001年に構築したDWHでは、真実のデータを現場に届けられなかったからだ。

 エフピコ 情報システム部の井上隆仁ジェネラルマネージャーは、「処理が遅く、結果を返すのに数時間かかることがあった」と話す。基幹系からDWHへのデータ転送に1カ月かかる場合もあり、必要なデータを、必要なタイミングで提供できなかった。

 DWHを構築してきた企業の多くは、エフピコと同様の問題に直面している。従来のDWHはデータの鮮度や提供タイミング、蓄積するデータの粒度や範囲に課題があった(図1)。

図1●これまでのDWHの問題点。適切な鮮度、粒度、範囲のデータを経営や現場に届けられなかった
図1●これまでのDWHの問題点
適切な鮮度、粒度、範囲のデータを経営や現場に届けられなかった
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 DBからDWHへのデータ転送に時間がかかるために更新頻度が落ち、データの転送は週次や月次が精一杯だった。しかもデータ量は増え、分析の処理速度は落ちる。高速化を図ろうとデータを加工・圧縮して転送したり、部門や業務別にDWHを構築したりした結果、利用者が必要なデータを入手できなくなることもあった。

技術の進化と現場の声が後押し

 ところがここに来て、こうした状況を改善し、真実のデータをつかもうとする企業が増えてきた。大量データを高速処理する技術の進化と、真実のデータを活用したいという経営や現場からの要請がきっかけだ。

 大量データの高速処理を目指した製品は、この数年で増えている。北陸コカ・コーラが採用したOracle Exadataは2008年9月に登場した。日本企業で本格的に導入が進んだのは09年以降のことだ。