この連載では、Facebookを中心とした「ソーシャルメディア」を企業でどのように導入するかをテーマにしている。前回は「ソーシャルメディアと収益モデル」について説明した。

 ソーシャルメディアは手段だから、「単に導入しただけで収益に貢献することなどありえない」ことや、「成果を出したいなら、リアルの収益モデルを正しく考え、手段としてのソーシャルメディアを上手に使う必要がある」ことも説明した。

 ソーシャルメディアは道具である。使う人のリアルな仕事の優劣によって価値が変化する「リアルを忠実に写す鏡」なのである。「リアルの仕事がダメならソーシャルメディアもダメ」「リアルが優れていれば、ソーシャルメディアでさらに良くなる」というのが筆者の主張である。

 今回のテーマは「お客さまの声をどのように収集するか」である。これはソーシャルメディアが得意とする「情報収集」テーマであるが、やや説明が難しい。なぜなら、単に「お客さまの声」といっても、どの業務で必要とするかで千差万別だからだ。

 第4回の「情報収集」で説明した通り、情報を集める場合は、まず「情報価値」を正しく定義すべきである。お客さま情報であれば「何に使うか」を正しく定義しないと意味がない。それでは有効な情報収集ができないことを理解してほしい。

 これを怠ると「お客さまの声がまったく収集できない」「お客さまの声なら何でも収集してしまう」「収集したがそれで終わりで何もしない」という具合になる。本来、業務に活かすためのお客さまの声収集にもかかわらず、「収集自体が目的となる手段の目的化」が生じてしまう。これでは正しいビジネスは永遠にできない。

 正しい目的、リアルでの入念な業務設計があって、はじめて手段としてのソーシャルメディアが活きる。ソーシャルメディアでのお客さま情報収集を正しく行うためには、まず、リアルの「お客さま情報収集」の業務設計が正しいことが必須なのである。

 このように、「ソーシャルメディアを利用とお客さま情報収集」の関係は一環したビジネス戦略、戦術でなければならない。これも、少し分かり難いと思うので事例を使って説明しよう。