前回は、ソーシャルメディア利活用の「戦略的な面」を考える第2回めの解説をした。そこでは、「ソーシャルメディアを含むデジタルを用いたアプローチを、的確に戦略・施策に組み込む」にあたっては、どういった点を強く意識していけばよいのか、という点について述べてみた。その中で、既にかなり知られている概念ではあるが、あえて「トリプルメディア」という考え方を取り上げている。

 前回の復習となるが、改めてトリプルメディアといわれる3つのメディアを説明すると以下のようになる。

  • オウンド(Owned)メディア:企業サイトあるいはキャンペーンサイトなど、自社で所有し情報を発信するメディア
  • ペイド(Paid)メディア:マス広告など、対価を払って情報発信するメディア)
  • アーンド(Earned)メディア:ソーシャルメディアなど、消費者が自ら発信する発言やコンテンツなどが中心となるメディア

 コミュニケーション設計を考えていくにあたっては、これらのメディアをオンラインの領域、そしてオフライン領域を問わず、一通り挙げていき、コミュニケーションを行うためのチャネルの棚卸しをしておくことが重要である。また、これらの棚卸しされたチャネルを、どのようにつないでいくかを考えることが基本となる。

ソーシャル上での存在を知らせる手段を用意することが必要

 さて、今回は、この「つなぎ方」について考えてみよう。実際にオンライン、オフラインの領域において、これらのチャネルをつないでいくにあたって、まず、どうしてもアーンドメディア、特にその中でもソーシャルメディアをどうするかに目が向きがちになる。しかし、それぞれのチャネルがきちんと連携されている状態を作るために、最も重要な部分は、むしろオウンドメディアではないかと筆者は考えている。

 例えば「ソーシャルメディアを活用したコミュニケーション施策」を運営していく場合に、少なからず見られるのが、ソーシャルメディア上に設けた自分たちのチャネルの運営だけに注力し過ぎ、結果的に効果的な連携が得られなくなってしまうケースである。例えるなら図1のような状態だ。

図1●ソーシャルメディアからのチャネル運営だけに注力し過ぎたコミュニケーションの例
図1●ソーシャルメディアからのチャネル運営だけに注力し過ぎたコミュニケーションの例
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 キャンペーンサイトを構築し、そこに対してソーシャルメディアやオンライン広告、あるいはメールマガジンなどのチャネルを用いてユーザーを集めるような流れになっている。もちろん、これはこれで悪いということはないが、懸念は存在する。

 仮に自分たちでソーシャルメディア上の窓口を設け、図1のようなコミュニケーションを取ろうとすると、そのソーシャルメディア上の窓口がなかなか機能しないことがある。十分なパフォーマンスを得ようとすると、少なくともTwitterアカウントではある程度以上のフォロワーが、Facebookページであればある程度以上のファンが必要である。そうではない状態でソーシャルメディア上でキャンペーンを展開しても、結果的には大きな結果は生まないことが十分に予想される。

 仮に自分たちでソーシャルメディア上の窓口を設けない場合でも同様である。あくまでも個人のソーシャルメディア上のアカウントを使って、ユーザーに参加させる場合であっても、今度はこの施策そのものを十分に告知できるようなスキームがないと、やはり成立しない。場合によっては、マスメディアを活用し、広告を広く、多く投下する必要も出てくるかもしれない。その場合、必然的に潤沢な予算がない限り、なかなか成立しなくなってくる。