真のグローバル企業を目指し、ビール大手4社が競うように、情報システムの全面刷新に着手している。各社の情報システム部門は、(1)クラウド導入によるシステム基盤の刷新、(2)業務アプリケーションの整理・統合、(3)世界規模でのIT投資の一元管理――を急ぐ。本連載の最終回では、(3)のIT投資管理の一元化に関するビール4社の取り組み状況を報告する。例えばキリンは、3000万円以上のグループ各社のIT投資案件はすべて、キリンビジネスシステム(KBS)で一元的に評価する体制を整備。KBSに「拒否権」を与えると同時に、投資対効果を見極める目利きの力を磨かせている。

【IT投資管理の一元化】あいまい案件に「拒否権」も

 グループ全体でIT投資を管理してムダを省き、システム関連業務の統制強化につながる体制をグローバルで構築する。これもアサヒグループホールディングス、キリンホールディングス、サントリーホールディングス、サッポロホールディングスの国内ビール大手4社が共通に取り組む情報システム改革の施策だ。

 ビール各社は、持ち株会社の下に事業会社や間接業務を担う関連会社をぶら下げる経営体制を採る。情報システムの企画・開発・運用といった機能について、4社はグループ内に設けたシステム関連会社に集約。グループ全体の情報化計画を立案したり、投資案件を一元的に評価したりできるようにしている。

 今後はさらに踏み込んで、システム関連会社がグループにおける事業会社の投資案件を厳しく精査する体制を築く。

事前と事後でIT投資を評価

 「事業会社を支援するだけでなく、ときには牽制もしてほしい」。キリングループのシステム関連会社であるキリンビジネスシステム(KBS)の横溝治行社長は、持ち株会社の経営層から、こんな指示を受けている。システム開発案件をより厳密にチェックし、無駄な投資を抑制するためだ。

 KBSはこの2011年2月、キリングループ各社のIT投資案件を一元的に評価する体制を整備した(図1)。各社のシステム投資案件をKBSに提出させ、提案部門の責任者が同席した会議で内容を審査するようにした。対象は予算が3000万円以上の案件である。

図1●キリングループが構築するIT投資管理体制
図1●キリングループが構築するIT投資管理体制
グループ企業における3000万円以上のIT投資案件を、システム関連会社であるキリンビジネスシステム(KBS)が一元的に評価する体制を整備する。