皆さんは、「1週間後に○○○を作ってほしい」と上司から頼まれたとき、あるいは自分で「△△△を作ろう」と考えたとき、いったい何から始めますか?
何も考えずにいきなり作業を始める人はおそらく少ないでしょう。多くの場合、まずは○○○や△△△を作るために何から手を付けて、次に何をすればよいのかという段取りを考えるはずです。もしくは、○○○や△△△の構成や構造はどうなっているのかを最初に明らかにし、その上で各要素を作成するためにどんな作業が必要なのかを考えていくと思います。
このように、人は何か作業を進める前に、何らかの形で作業の計画を考えます。こうした計画作りで力を発揮するのが、この記事のテーマである「WBS(Work Breakdown Structure)」です。
WBSを作るとさまざまなメリットがあります。この記事では、そんなWBSを初めて作成する方のために、WBSの役割やメリットなどについて、5回にわたって解説していきます。WBSの良しあしは、プロジェクトの成否を大きく左右します。また、WBSはプロジェクトにかかわるすべての方に影響を与えます。そうしたことが、本記事でお分かりいただけると思います。
三つの約束事を守る
WBSについて馴染みのない方もいるかと思いますので、まずはWBSが何なのかを改めて説明します。
WBSの歴史は意外に古く、その起源は1960年代、今から50年以上も前にさかのぼります。WBSという言葉を分解すると「Work」「Breakdown」「Structure」という三つの単語が組み合わさっていることが分かりますね。それぞれの単語の意味を理解すると、WBSが何を目指しているのかを理解しやすくなるでしょう(図1)。

最初のWorkは、「目的を達成するために必要な作業」のことです。例えば、プロジェクトの最終的な目的が「在庫管理システムを作る」ことであれば、WBSでは在庫管理システムを作るためにどういう作業が必要で、その結果、成果物としてどんなプログラムやドキュメントを作成するかを洗い出します。
続くBreakdownは、「漏れなく分解」することです。プロジェクトの目的である「在庫管理システムを作る」を最上位のレベルに位置付け、そこから在庫管理システムを分解した構成要素を下位レベルとして定義していきます。ここではあえて「漏れなく」と断っているのがポイントです。
最後のStructureは、「構造化して見える化」することです。必要な作業、結果として作成される成果物をツリー構造によって階層化して表します。上位のレベルが、下位のレベルの構成要素によって出来上がるように見える化します。
整理すると、WBSとは「目的を達成するために必要な作業」を「漏れなく分解」し、「構造化して見える化」するという意味になります。これら三つは、WBS作成時の約束事として覚えておいてください。
では、三つの約束事を守ると、どんなWBSができるのでしょうか。図2にツリー形式で記述したWBSと、リスト形式で記述したWBSの例を示しました。WBSがどういうものかをイメージしてください。
ここ最近は、ツリー形式ではなく表計算ソフトを用いてリスト形式でWBSを書くことが多くなりました。スプレッドシートの縦方向に、具体的な作業や成果物を列挙していきます。作業の階層は、横方向に列を1段下げることで表現します。
WBSの良しあしは、プロジェクトの成功を左右します。また、WBSはプロジェクトにかかわるすべての人に影響を与えます。今求められているのは、50年以上も前に登場したこのWBSの活用です。WBSが何かをおおまかにつかんだところで、次回はWBSとは誰のためのものなのかを考えていきます。