仮想デスクトップの端末に何を採用するかで、コストやメリットは変わる。特に、モバイル環境や在宅勤務では考慮したい。

図1●仮想デスクトップで使う端末の例
図1●仮想デスクトップで使う端末の例
一般的なPCとシンクライアント端末の2種類がある
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 選択肢は大きく、Windows OSを搭載した一般的なPCと、シンクライアント端末がある(図1)。北陸銀行は、Windows 2000を搭載した既存PCに、画面転送ソフトを導入して使った。新たに端末を購入しなくて済むことがメリットであり、在宅勤務のPCもこの形態になる。課題は、PCに入っているWindows OSやソフトを管理する必要があることだ。

 シンクライアント端末は、ディスクやファンといった駆動装置がないのでPCに比べて故障が少なく、セキュリティも確保しやすい。

 ただし、Windows OS搭載機よりもライセンス費用がかかる。シンクライアント端末の場合、先のWindows SAではなく、仮想デスクトップのOSと、OSへの接続権を含む「VDA(Virtual Desk-top Access)」ライセンスが必要だ。前回の図1の例では、VDAは1030円(PC1台/月額)なので、合計1112万4000円(PC300台、3年間)になる。

 シンクライアント端末でも、画面転送ソフトを動かすためにOSは必要だ。搭載OSには選択肢がある。東京海上日動火災保険が導入したのは、Windows CEまたはWindows XP Embeddedを搭載したNECの製品だ。それ以外にもLinuxや、米ワイズテクノロジー独自の「Thin OS」もある。

 そのThin OS搭載機を利用する三菱東京UFJ銀行は、「サイズが小さい非WindowsのOS」であることを採用理由に挙げる。「最重要課題のセキュリティを確保するために、ウイルスが作られやすいWindowsは端末に導入したくない。一方、容量が数百メガあるLinuxはアップデートに手間がかかると判断した」(徳永調査役)。

 Thin OSは4Mバイトと小さく、起動時間も数秒程度と短い。ただし、ユーザーがソフトを導入することができない。端末セキュリティの面ではメリットだが、モバイルや在宅など、リモートアクセスによる利用では弱点になり得る。モデムのドライバーやサードパーティー製のVPNソフトが導入できないからだ。ワイズテクノロジーの松浦淳日本法人代表は「通信やセキュリティ関連のソフトが導入できないという課題は、テザリングやSSLなどの普及で緩和されつつある」と話す。

 会社やモバイル、在宅勤務など各利用シーンで最適な端末は異なる。機能やコストを十分に調べる必要がある。