富士通グループと大和ハウス工業が、基幹系システム構築プロジェクトにTOC(制約条件の理論)流のプロジェクト管理手法、CCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)を適用したところ、開発フェーズとテストフェーズでそれぞれ約3割の工期短縮に成功した。第1回では、プロジェクトの内容や、CCPMの主な特色といった概要を説明した。

 CCPM流プロジェクト管理を現場に浸透させるうえで、特に要となるのが、現場の技術者を率いる「タスクマネージャ」の存在だ。今回は特にこの現場サイドのマネジャーの役割を中心に、現場寄りの視点からCCPMを成功させる秘訣を探っていこう。

*  *  *

 第1回では、富士通グループと大和ハウス工業が、基幹系システム構築プロジェクトにCCPM(クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)を適用して工期を短縮できた成功要因として、主に下記を説明した。

  • プロジェクトを計画するに当たり、想定した工期に対して、「成功率50%の短い工期」または「工期半分」を設定する
  • 「これは工期を押してしまうかも」とリスクに感じた情報は、現場の作業者から小さなことでもマネジャーに積極的に報告してもらえるよう促す
  • 設定した工期を守れなくても現場を責めない一方、サバ読みした残日数を報告した現場を注意することで、サバを読んだ申告を減らしていく

 ここで大事なのは、問題が大きくなる前に小さな問題でも現場がどんどん報告するように変わったからこそ、プロジェクトがスムーズに進行するようになったということだ。ただ単に短い工期を設定したことで、直ちに進行が早まったわけではない。

 とはいえ、普通に考えれば、想定の半分などという短い工期を設定すると、現場のメンバーはプレッシャーを感じて反発するはずである。

 そこで現場の声も取材した結果、短縮された工期の下で現場が前向きに仕事を取り組んでいけるようにするために、マネジャーや現場リーダーには相応の配慮が求められることが分かった。主なポイントは4つある。(1)現場リーダーである「タスクマネージャ」による質問の仕方を工夫する、(2)現場に細かいタスク単位の日程ではなく残日数だけを意識してもらう、(3)マルチタスクは極力排除する、(4)人手不足を訴えるタスクが生じることを見越して「助っ人」になれる人材を確保しておく――だ。

 以下、順を追って説明していこう。

現場にプレッシャーをかけない質問を工夫する

 今回、富士通グループと大和ハウス工業は、エンジニア3~4人ごとにタスクマネージャという、現場のチームリーダのようなポジションを任命している(図1)。タスクマネージャの主な役割は、現場技術者の進捗管理だ。現場で解決できる問題は現場で解決し、大きな問題は、上位のマネジャーである「チームリーダ」などに報告する。

図2●体制と会議体の特徴
図1●体制とタスクマネージャの主な役割
出典:富士通関西システムズ
[画像のクリックで拡大表示]