2011年10月、英ARMは次世代アーキテクチャであるARMv8を発表した。ARMv8は、64bitアーキテクチャだが、現在のARMv7との互換性を保つため、2つの動作モードを持つ。これは、パソコン用のIntel CPUが32、64bitの両動作モードを持つのと同じだ。ARM社の発表などによれば2012年後半に命令セットなどが発表され、実際のプロセッサの登場は2014年頃と言われている。

 基本的に64bitプロセッサの利点は、利用できるメモリーサイズにある。32bitプロセッサでは、アドレス空間が32bitで4Gバイトしかない。また、マルチコアプロセッサの開発も容易になっており、簡単に複数のプロセスを同時に動かせる。

 アプリケーション1つから見ると4Gバイトの仮想メモリー空間は十分かもしれないが、オペレーティングシステムでは、4Gバイトの「物理」メモリー空間は今では小さすぎる。さらに、仮想化技術によってシステム自体とハードウエアを分離したり、高度なセキュリティを実現したりとなると、さらにメモリーが必要になる。

 64bit化が進むもう1つの理由は、消費電力の増大や発熱といった問題をある程度解消できると期待されているからだ。スマートフォンやタブレットの話題からは離れるが、サーバーを集中して設置するデータセンターでは消費電力や発熱が大きな問題となっている。

 しかもサーバーは大量のメモリー容量を必要とし、クライアント以上に64bitシステムが必須な状況となっている。そのため、低消費電力であり、かつコンパクトなシステムが実現できる64bitプロセッサへの要望は大きい。

64bit化がサーバー用途をさらに進める

 プロセッサの64bit化は、時代の趨勢といえる。すでにRISC系プロセッサである米IBMの「POWER」や旧米Sun Microsystemsの「SPARC」などは64bit化しており、IA-32と呼ばれた米Intelやその互換プロセッサも64bit化している。

 かつてはコンピュータシステムの中心を占めていたメインフレームも64bitアーキテクチャだっだ。ARMv8は、広く普及しているプロセッサとしては、最も遅く64bit化するわけで、その意味では「最後の64bitプロセッサ」といえる。