スマートフォンやタブレットに使われるプロセッサ(アプリケーションプロセッサ)には、グラフィックス描画のためのハードウエアが搭載されることが多い。PCでいえばGPUだが、スマートフォンなどでは使い方が少し異なっている。

 一般に、同じ処理をソフトウエアでするよりもハードウエアでした方が電力効率が高く、結果的に省電力となる。しかし、ソフトウエアは機能の変更が簡単で、製品がメーカーの手を離れてもアップデートなどが可能なのに対して、ハードウエアの機能は固定されており、あとから機能を変更することができない。

 また、ソフトウエアであれば、たとえ使わなくてもソフトウエアを記録する部分しか専有しないのに対して、ハードウエアは回路パターンが物理的な場所を占有するため、利用頻度が低い機能に利用することは難しい。

 PCでは、GPUはおもに三次元グラフィックスに利用されてきたが、Windows VistaでGPUを使ったウィンドウなどの描画機能が搭載されてからは、画面描画全般に関わるようになった。現在では、三次元グラフィックスの描画機能のないディスプレイデバイスはほとんど見かけなくなった。

 スマートフォンやタブレット用のプロセッサでは、もともとプロセッサ性能が高くないため 、負荷のかかる描画処理にはGPUを使うのが一般的だ。消費電力という点でも、ユーザーインタフェースを快適に動作させるためにも必要な部分といえる。特にARM系のプロセッサでは、複数のメーカーが同一のプロセッサ設計を利用するため、処理性能では大きな差が出にくい。しかし、GPU部分には複数のアーキテクチャが存在しており、それらによって性能差や個性が出てくる。

 しかもGPU部分は、プロセッサ内部に統合されているため、PCのように自由に組み合わせができるわけではない。さらにアプリケーションプロセッサは、必ずしもGPUを搭載しているとは限らない。過去には、外付けだったこともあり、簡易な表示のみを目的としている場合にはGPUを搭載しないこともある。

スマホ/タブレット向けGPUのアーキテクチャ

 アプリケーションプロセッサに搭載される主なGPUアーキテクチャには表1のようなものがある。

表1●主なGPUのアーキテクチャ
アーキテクチャ設計企業採用メーカー/製品
MaliARMSamsung/Econosys など
GeForceNVIDIANVIDIA/Tegra
AdrenoQualcomm(AMD)Qualcomm/Snapdragon
PowerVRImagination TechnolgiesTI/OMAP など

 これらのなかで二つはアプリケーションプロセッサを作っている半導体メーカーによるもので自社製品でのみGPUアーキテクチャを利用している。残り二つは、自身ではアプリケーションプロセッサを製造しておらず、他社にライセンスすることをビジネスとしている。