スマートフォン/タブレットの低価格化が進んでいる。例えば2011年に米アマゾン・ドット・コムが米国で販売を開始した「Kindle Fire」のように、自社のサービスとタブレットを紐づけることで端末自体の価格を抑えてサービスから利益を得るビジネスモデルが低価格化の背景の一つと説明されるが、実はプロセッサもスマートフォン/タブレットの低価格化に関連している。

 パソコンの場合、プロセッサやメモリーが同じなら、どのメーカーでもほぼ同じような価格帯になる。また、同種のプロセッサなら、クロック周波数やコア数による性能の違いはあるもののその価格差はあまり大きくない。

 一方スマートフォンやタブレットの場合、前述のようにビジネスの仕組みを利用してハードウエアを安価に提供するという手法もあるが、ハードウエア自体の価格が下がりつつあるのも事実である。

 もちろん、中国などの“無名”メーカーが低価格のAndroidタブレットを販売しており、それらの中にはタッチパネルを感圧方式にしてマルチタッチができないものなど、当初から安くすることを狙った製品も存在する。だが、パソコンに比べると総じて「Androidタブレット」は製品によって大きな価格差があり、しかも、下は100米ドルを切る価格で販売される。この背景にはパソコンとは違う組み込み系CPUならでは事情もある。

Android端末は安価に製造が可能

 Androidはその仕組みとして、流通するアプリケーションはプロセッサのアーキテクチャに依存しないようになっている。Androidのアプリケーションは、Javaで開発され、仮想マシンコードにコンパイルされて流通する。これを実行するのが例えば専用の仮想マシンDalvikである。Dalvik自体は、C言語で記述されており、特定のプロセッサ向けにコンパイルされてAndroidのシステムの一部となるが、Dalvikが実行する仮想マシンコードは、特定のCPUとは無関係である(図1)。このため、Androidのアプリケーションは、ハードウエアがどのCPUを採用しているのかに関わりなく同じバイナリが実行が可能なのである。

図1●Androidのアプリケーションは仮想マシンコードとして作られる
図1●Androidのアプリケーションは仮想マシンコードとして作られる
仮想マシンコードを仮想マシンDalvikが実行する。Dalvik自体は特定のプロセッサ向けにコンパイルされた機械語コードだが、実行される仮想マシンコードはハードウエアに依存しない。

 こうした構造になっているため、Android端末は、ある程度の性能を備えたCPUであれば、どのようなCPUを使っても設計可能だ。最も多いのは、英ARMのARM系のプロセッサだが、そのほかMIPS系プロセッサ、そして米Intelのx86プロセッサでもAndroidタブレットを作ることができる。このようにプロセッサや回路を自由に選べるため、ハードウエア部品の選択肢は非常に多い。そのため安価な部品だけを選択して、低価格の製品を作ることができる。