著者は新旧メディアに詳しい米国のジャーナリストで、日本でも『グーグル的思考』(PHP研究所)などの訳書が知られる。インターネットの普及によって変質しつつある「パブリック(公開)」の概念について分析。ネットが生み出す社会現象に切り込む大著だが、現実の事件や企業・サービスの事例がふんだんに盛り込まれているため、読み進めやすい。

 著者は、パブリックを避けることばかりを考え、プライバシーを過度に意識する組織や個人は、ネットの恩恵を最大限に得られないと説く。フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディア上では、プライバシーをある程度公開するからこそ、学びの機会があるという。

 「自動車の設計プロセスを公開すれば、顧客はデザインの是非を合理的に判断できる」「経営戦略策定過程や経理データも公開したらどうか」といった主張は過激だが、冷静な分析に裏付けられている。

 米国政府の外交公電が「ウィキリークス」で公開された事件についても、「政府職員なら誰でも入手できるもの」「評論家が言うほど驚くべき内容は無い」「情報を必要以上に隠そうとするからこそリークのリスクが増す」と言い切る。

パブリック

パブリック
ジェフ・ジャービス著
関 美和訳
小林 弘人監修・解説
NHK出版発行
1890円(税込)