標的型メールやWeb改ざんといった、マルウエアを使った攻撃の被害が止まらない。本書では、企業の担当者がマルウエアによる被害を受けないようにどのような対策を施し、万が一感染したときにどう対処したらよいかをまとめている。

 本書の特徴は、マルウエアの動きや仕組み、感染時の兆候、作られ方の解説に約半分の分量を割いていること。マルウエアの解析・研究を行っている著者が執筆しているだけあって、それぞれの解説が細かい。マルウエアの巧妙さ、狡猾さがあらためてよくわかる。古い歴史的な話は排し、話題になっているマルウエアを中心に取り上げているので、今対策を考える人にとって無駄な内容が少ないのも良い。

 おもしろいのは、ケーススタディーで対処方法を解説している部分。ウイルス対策ソフトで検知できない新種のマルウエアの存在を認め、それに感染したときは定義ファイルが提供されるまでどのような対応を採ったらよいかを示している。このような話をきちんと解説した本は少ない。ウイルス対策ソフトベンダーの技術者が執筆しているだけに、その対応方法に安心感もある。

PCのウイルスを根こそぎ削除する方法

PCのウイルスを根こそぎ削除する方法
本城 信輔著
技術評論社発行
2079円(税込)