クラウドが変えるシステム運用の新常識の三つめは、インフラで使う技術を「固定」することだ。
これまでシステムで利用するハードやOS、ミドルウエアなどのインフラはその時々で最適な製品や技術を選ぶケースが多かった。だが、サービスを素早く安定的に提供するには、インフラで利用する技術の組み合わせを固定して、標準化を進めるのが望ましい。この作業は、インフラを企画・設計する段階で、運用担当者が主導して進めることになる。
対象となる技術の範囲は、パブリッククラウド、プライベートクラウドのどちらを使うか、プライベート型の場合は自社所有かベンダー所有かで異なる(図1)。JTや東京ガス、日本通運、国士舘大学はどう標準化を進めたのか。
専任担当者が標準化
JTはベンダー所有のプライベートクラウドを利用する。2015年までにグループ全体のインフラの9割を日立のプライベートクラウドに移行する計画だ。
クラウドに移行するにあたり、JTはインフラの標準化を進めた。アプリケーションフレームワークから、アプリケーションサーバーやデータベースサーバーなどのミドルウエア、仮想マシン、OSまでの組み合わせのパターンを作成したのである。
「組み合わせの詳細は明かせないが、パターンの種類を絞った。種類を増やすと、クラウドのメリットを引き出せなくなる」と、JTで標準化を担当した鳥居亮弘 IT部主任は説明する。OSとしてUNIXとWindowsを選び、ミドルウエアは業界のシェアと製品開発のサイクルを重視して選択したという。
鳥居主任は組み合わせのパターンを日立に提示して、プライベートクラウドの構築を依頼。日立はその組み合わせによるクラウド環境を構築して、JTに貸し出す形を採っている。このパターンで既存のシステムを移行できるかどうかは、日立が「システム診断」として無償で検証する。
JTの國枝次長は「インフラ管理の多くをベンダーに任せる場合も、どう標準化するかはユーザー側の運用担当者が考えるべき」とする。そこでITベンダー出身の鳥居主任を中途で採用した。標準化の組み合わせは「1年ごとに見直す」(鳥居主任)考えだ。