前回は、BtoBビジネスにおいてソーシャルメディアを利活用する形態として、社員一人一人が「企業内個人」として、顧客企業あるいはパートナー企業における「企業内個人」とのコミュニケーションを図る手段のひとつとして使うやり方を提示した。

コミュニケーション主体が個人となる弊害

 これは、通常の業務プロセスの延長線上に位置付けることで、比較的簡単に実践できる。ソーシャルメディアを自分たちのビジネスに利活用するという点で、確かにイメージしやすいし、ある意味「とっつきやすい」ものと言ってよい。だが、「いや、こういうことをやりたいわけではない」と思う人もいるだろう。

 ソーシャルメディアを利活用するイメージとしては、やはり何らかの施策を立案し、ソーシャルメディアを情報の発信チャネルとして位置付けて、そこから生まれるコミュニケーションをビジネスのゴールにつなげていくことを考えている人も多いだろう。そのため、地味なアプローチではなく、目立つようなコミュニケーション活動を展開していきたいと思う人も少なくないはずだ。

 だが、BtoBビジネスを行っている企業が、こうしたコミュニケーション活動を展開していくにあたって、どうしてもネックになってしまうのが、「ソーシャルメディアにおけるコミュニケーションは、基本的には個人が主体になる」という点だ。つまり、BtoC的な形にどうしてもなりがちになってしまうという点だ。ゆえに悩んでしまうことも多くなってしまう。

エンドユーザーの反応をビジネスに応用する使い方も

 では、BtoBビジネスを行っている企業が、ソーシャルメディアを情報の発信チャネルとして位置付けてビジネスに利活用するには、どう考えていけばよいだろう。こうした使い方として「マーケット規模およびニーズの可視化」といった方面での活用ができる。

 こうした使い方は、海外を中心に徐々に実践されるケースが増えてきている。自分たちの製品やサービスを使ってビジネスをしている企業、あるいはパートナー企業の顧客(エンドユーザー)をターゲットにして、ソーシャルメディアを関連させた施策を展開していくケースだ。

 たとえば、ソーシャルメディアを用いてエンドユーザーに対して直接コミュニケーションし、その反応をつぶさに見ていくことでビジネスのマーケット規模を推し量ることも不可能ではない。仮にユーザーの反応規模が大きい場合には、顧客企業、あるいはパートナー企業のモチベーションも併せて高めていくことができるだろう。さらに、個人が主体となるコミュニケーション手段を使うことで、潜在的なマーケットの掘り起こしも含めて期待できる可能性がある。

 また、さらに細かく反応を見ていけば、自分たちがマーケットに対して提供している製品やサービスに対するフィードバックを収集していくことも可能となる。ひいては、これらを自分たちのビジネスにさらに反映させるということも十分にできるだろう。

ソーシャルを活用するための基本はあくまで「傾聴」

 今回の例として挙げたものは、いずれも決して自分たちに直接的なリターンをもたらすというわけではなく、あくまでも間接的な効果をもたらすものである。だが、あえてこうした間接的な効果を前提に考えることで、BtoBビジネスにおけるソーシャルメディアの利活用に対する可能性や選択肢がずいぶん広がってくるだろう。

 ただし、こういった戦略を進めていく場合には、これまでも繰り返し述べてきたように、そもそもソーシャルメディア上に広がる「声」を的確に収集し、聴くための体勢やシステム面での準備を整えておく必要がある。ここでも「聴く」ということが重要なアクションとなってくるのだ。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
リーバイ・ストラウス ジャパン デジタルマーケティングマネージャー
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後PR代理店バーソン・マーステラでリードデジタルストラテジストを務め、2011年12月よりリーバイ・ストラウス ジャパンにてデジタルマーケティングマネージャーとなる。