データセンターの設置を考えるうえで、マレーシアは非常に魅力的な場所である。第1の魅力は、ビジネスの中心地である首都クアラルンプールとその周辺では、自然災害が極めて少ないことだ。地震、津波、台風、洪水、火山がなく、世界的に最も天災リスクの低い地域である。
第2は電気代の安さだ。データセンターの運用コストの過半を占める電気代は、シンガポールの半分以下である。第3は社会インフラがしっかりしていること。政府は2020年の先進国入りを目指しており、通信や高速道路が現時点でもかなり整備されている。第4は英語が広く普及していること。第5は政治が安定していることである。
欧米企業の間では、こうした長所が以前から評価されていた。東南アジア地域のデータセンターをマレーシアに集約したり、ディザスターリカバリー(DR)拠点やバックアップ用データセンターをマレーシアに構築する動きが、既に始まっている。
日系企業ではマレーシアのデータセンターを利用する割合は低かった。しかし東日本大震災を契機に、DRやバックアップ用として検討対象にするケースが増えている。実際、マレーシアを見学したり、当社に問い合わせてくる企業は確実に増加している。一部企業は既に運用を開始している。
旺盛なデータセンター需要に応えるため、当社ではクアラルンプール近郊のIT特区である「サイバージャヤ」において第3データセンターの建設に着手した。2012年第2四半期の開業を予定している。同時期に、NTTコミュニケーションズとテレコムマレーシア共同敷設による海底ケーブル「Asia Submarine-cable Express」が、日本─マレーシア間で開通する予定だ。
顧客に対して「Never Mind」
マレーシアの公用語はマレー語だが、多民族国家であるため、実際に使われる言語は多種多様である。そうした環境から、広く英語が使われている。マレーシアの英語には「マングリッシュ」と呼ばれる独特の使い方がある。マングリッシュの一つが「Never Mind」(気にするな)で、マレーシアの現状を象徴した言葉となっている。
私が衛星テレビの契約でトラブルになった際、注文の処理ミスが原因と判明したにもかかわらず、コールセンターのオペレーターは堂々と「Never Mind」と言い放った。ミスを犯したサービス提供側が、顧客を丸め込もうとしたのだ。
マレーシアは社会インフラなどのハードは整備されているものの、ソフト(サービス)は改善の余地が大きいとされる。「Never Mind」はその典型だ。我々は顧客に対し「Never Mind」と言うことのないよう、サービスを提供していきたい。