オランダは欧州におけるハブとなる条件を備えている。税制優遇もあり、日系企業の欧州本社や生産・物流拠点が多く存在する。

 例えば物流機能は非常に優れている。オランダ第二の都市ロッテルダムにあるユーロポートは欧州最大の港とされ、コンテナ貨物取り扱い個数は欧州トップである。ユーロポートは15世紀から大型船舶に対応して、商工機能を発展させてきた。東インド会社の主役となった港でもある。

 ユーロポートは、オランダ最大の空港であるスキポール空港へのアクセスの良さも特徴だ。そのため物流や運輸機能を提供している企業、あるいは物流機能を自社で有するメーカーの欧州拠点がオランダに集まっている。外資企業に対する法人税、金融サービスの優遇措置から銀行や保険業といった金融機関も数多くある。

 企業の進出の多さから、オランダは国際競争力の強い国という評価を受けている。世界経済フォーラムの2011年度のレポートでは、国際競争力トップ10の7位にランクインした(日本は9位、イギリスは10位)。

 生活水準も高い。ヨーロッパ都市モニター2011では、首都のアムステルダムが4位だった。生活環境の改善と環境汚染への取り組みの評価が高く、言語環境でも上位となった。公用語はオランダ語だが、オランダ国民の大部分は英語を話せる。生活や仕事のすべてを英語で対応できるほどだ。

 国際競争力や生活水準の高さは、合理的な思考やチャレンジ精神といった国民性にあると筆者は見ている。

合理的で革新的な国民性

 この国民性はインターネット分野でも発揮されている。インターネット接続の普及率は90%と、欧州トップを独走中だ。平均ダウンロード速度も欧州トップで、世界でも韓国、香港、日本に次ぐ速度との報告もある。

 実際、我が家のインターネットは申請から3日以内に開通した。50Mビット/秒の契約速度に対して、実効速度が40Mビット/秒と非常に良好なインターネット環境である。

 合理性を尊ぶのはビジネスでも同様。例えば日本で慣例となっている年末年始の顧客訪問は、オランダ企業では全く必要のないものに映るようだ。

 誤解を恐れず言うと、オランダ企業は、適切な提案を必要なときだけ受け入れ、しかもコストを重視する。提案の前段にあるプロセスは排除される。過去に縛られず、積極的で新しいコンセプトやアイデアが好まれる。

 鎖国当時の日本は「蘭学」としてオランダから西洋文化と技術を取り入れた。ICT列強各国の企業とグローバルに戦う現代でも、400年前と同様にオランダに学ぶ考え方やアイデアがありそうだ。

潮田 兼和(うしおだ ともかず)
KDDIドイツ アムステルダム支店 支店長。2008年1月にKDDIヨーロッパ(ロンドン)に赴任、2010年10月にKDDIドイツのアムステルダム支店に異動。管理業務に加え、技術、営業もこなすプレーイングマネージャーとして奮闘中。たまったストレスはお酒で発散。昼に目立たず、夜に目立つのが玉に傷……。