写真1●CESの会場となるラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)
写真1●CESの会場となるラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)

 2012年1月10~13日の4日間、消費者向け新技術の総合展示会「2012 International CES」(CES2012)が米国ラスベガスで開催された(写真1)。

 私自身、CESには過去10年の間に5回(2003年、2004年、2010年、2011年、2012年)取材で参加しているが、過去の出展との比較や毎年参加しているという関係者への取材などから今年は大きな節目だと感じた。

 これまでの開催と比べて最も様変わりしたと感じたのは、出展企業の訴求ポイントが「製品単体の訴求から新しいユーザー体験の提案」に移っていること。多くのメーカーが、製品の仕様を磨くだけではなく、ネットなどを媒介とした機器間あるいはクラウドとの連携サービスに知恵を絞っていた。これは、テレビやスマートフォンなどの機器がいずれも汎用化し、製品単体では違いを見せにくくなっているからだろう。昨年亡くなったスティーブ・ジョブズ氏流のユーザー視点での考え方、あるいはプレゼンスタイルが浸透したことも背景としてありそうだ。

 このほか、各種のネットサービスを受ける端末としては、スマートフォンに代表される携帯機器の台頭によって消費者向けデジタル機器の主役は「パソコンからモバイル」という流れがますます加速していると感じた。さらに、基調講演や展示会場ではアウディやメルセデスなど自動車業界の姿が目立つようになり、自動車とデジタル機器やサービスとの融合が一段と進みそうな兆候がみられた。

 地域別の市場に目を移せば、欧米市場の飽和と新興国市場の成長により市場の中心は「成熟国から新興国」にシフトしつつある。

 本特集では、こうした出展の様子を踏まえ、同イベントにおけるIT分野の最新動向を、「市場」「サービス」「製品」「政策」に分類、2012年のトレンドを展望する。

来場者や出展者数は過去最高

 CESは44年の歴史があり、日本では「家電の祭典」「家電見本市」などと呼ばれることもあるが、年々規模は拡大、取り扱う分野も広がり、今では「消費者向け新技術と新製品の総合展」と呼ぶのがふさわしいイベントになっている。例えば、今回は、これまで2月に開催されていたデジタルカメラの展示会「PMA」が、「PMA@CES」として併催され、ニコンやキヤノンといったカメラメーカーも名を連ねた。

 今回、実際に現地に足を踏み入れて驚いたのが、圧倒されるほどの来場者の数である。新製品や新サービスの会見場では、会場の制約から入場できない報道関係者が続出し、展示フロアには来場者があふれ返る。会場の担当者から、直接説明を受けるのも難しいほどだ。

 それもそのはず、来場者数は15万3000人に上り、過去最高に達したという。出展者数は3100以上、展示フロア面積は186万平方フィート(約17万3000平方メートル)。これは、国内では最大規模の展示スペースを持つ幕張メッセの国際展示場1~8ホール(5万4000平方メートル)の3倍以上となる。

 展示会場で来場者をひときわ集めていたのが、サムスン電子とLGエレクトロニクスの韓国勢(写真2)。米国では日本勢を抑えてトップブランドとなっているテレビを中心に、スマートフォンやパソコン、プリンター、白物家電まで幅広い製品を展示した。

写真2●多くの来場者が足を運んだサムスン電子のブースの様子
写真2●多くの来場者が足を運んだサムスン電子のブースの様子