2012年1月25日に発生したNTTドコモの通信障害は都内で最大252万人に影響を与えた大規模なものとなった。実際、東京都港区にオフィスがあるITpro編集部でも「つながらない」「連絡がこない」といった声が多く聞かれた。
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他の携帯電話事業者よりもユーザー数が多く、影響を与える範囲も広いため、大きく報じられるという事情があるものの、NTTドコモのトラブルはここ最近ひん発している。その背景にあるのがスマートフォンの急激な増加だ。ここ半年のトラブルを見ていくと、2011年6月6日の通信障害を除き、いずれもスマートフォンが関連している。
特に深刻だったがの2011年12月20日に発生したトラブルと、先日25日の通信障害だ。前者のトラブルは ユーザーのメールアドレスやメールの本文自体が漏えいするなど、「電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第4条第1項に規定する通信の秘密の漏えいがあったものと認められる(以下略)」(以上総務省資料より抜粋)という通信事業者として起こしてはならないトラブルである。
後者は最大252万人に影響を与えた大規模な障害であるだけでなく、その原因が制御信号の増加にある点だ。制御信号は、携帯電話が実際にネットワークに接続するために必要となる接続要求や位置情報登録などのための信号のこと。この障害が深刻なのは、“接続する”という根幹にかかわるものであるとともに、NTTドコモ1社だけでは根本的な解決ができないからだ。ドコモ側の視点からやや乱暴な言い方をすれば、インターネットやPCの世界からやってきたプレイヤーが、これまでの通信の“流儀”にとらわれず、上位レイヤーのサービスを提供するために、信号を出しまくっているといった状況である。
通信事業者の中には「うちは違う」と言うところがあるかもしれないが、こうした障害が発生するのは、相も変わらず“デジュール標準”のテレコムの世界と、“デファクト標準”のインターネットやPCの世界は融合していないということを示しているとも言える。
以前のインタビューで、UBS証券のアナリストである梶本浩平氏は、米グーグルが米モトローラ・モビリティを買収するにあたり、次のようなことを述べていた。「モトローラはもともとテレコム側の考えをする企業で、通信事業者との付き合いが長く、そういう知見も持っている。そんなモトローラと、インターネットの世界でトップの知見を持っているグーグルが融合するのだから、これは面白い」。
個人的な意見になってしまうが、グーグルやモトローラ・モビリティだけでなく、NTTドコモにも、日本最大の携帯話事業者として、テレコムとインターネットの世界が融合するためのかけ橋の役割を担ってもらいたい――。そんなことを週末にかけて思っている。
(参考)そのほかのこれまでの障害
【2012年1月1日~2日 spモードメール障害】
2012年1月1日の午後9時30分から1月2日の午前0時45分にかけて、スマートフォン向けメールサービス「spモードメール」が届かなかった場合の不達メッセージを一部のユーザーに送信できなかった。
【2011年12月20日 spモードメール障害】spモードメールを利用している一部ユーザーのメールアドレスが、なぜか別のユーザーのメールアドレスに置き換わるトラブルが発生した。
【2011年8月16日 spモード障害】スマートフォン向けプロバイダーサービス「spモード」がつながりにくい状況になった。「圏外に移動した」「無線LANの接続に切り替えた」などの場合に発生した。
【2011年6月6日 通信障害】関東甲信越地域で、NTTドコモの携帯電話サービス「FOMA」「mova」の一部の端末に通信障害が発生。通信設備の故障により輻輳が発生し、音声およびパケット通信がつながりにくくなった。復旧までに13時間を費やした。