総論賛成、各論でとまどい---日経コンピュータがITpro会員4001人を対象に実施したIFRS(国際会計基準)意識・動向調査の自由意見から、IFRSの必要性を認めつつも、対応に慎重な姿勢が浮かび上がる。主な意見を見ていく。

 ITpro会員4001人向けに実施したIFRS動向・意識調査の自由意見欄には、多くの意見をお寄せいただいた。全体としては、IFRS導入を前向きに捉える一方、対応する上で直面する可能性が高い課題を冷静に考えている意見が多かった。その一部を紹介しよう。

「迅速な決断と意思表示が必要」

 まずは、とにかくIFRS導入をすべきとする意見である。

・日本の企業といえども、IFRSを全く無視して事業を継続することはできなくなるであろう。導入先送りではなく、迅速な決断と意思表示が求められると考える。任意適用の幅を広げ、門戸を大きく開くことから始めるべきである。

・海外から日本の企業に対する会計への不信感が高まる中、それを払しょくするIFRSの導入は早急に行うべきものだと思う。

・すぐに、連結、単独とも実施すべき。これまで日本の企業はぬるま湯に漬かっていた。非上場の中小企業にも広めるべし。併せて、国は企業に対してコンプライアンス、ガバナンスを強化させよ。

・オリンパス問題の発生も踏まえ、コンプライアンスへの積極的な取り組みの重要性や、企業情報のディスクローズといった点からも、上場企業のIFRS適用は国際的にみてもとても重要だと思う。経済活動の主流たる大企業は見本を見せ、日本経済を引っ張ってくれないと示しがつかない。

・多数の国とのアライアンスの中で生きていこうとするなら、適用の是非など論外である。日本の役所・企業で働く人々は、外資系企業以上にこの国益に責任があるはず。非関税障壁に守られた中での強さなど、虚構でしかない。共通の会計基準で戦うべきだ。

 IFRSの導入によるメリットを評価する声も多かった。

・企業自ら、より厳しい会計基準のルールを課すことによって、市場の健全化と他社との差別化が図れると思う。ルールベースの日本基準では会計の逃げ道がある。

・日本経済の力が相対的に弱まってゆく中で、株式市場のガラパゴス化は致命的。明治以来の、もう一歩進んだ開国をするためにもIFRS対応は必須と思われる。モノサシを変えるということは考え方を変えること。一見大変そうに思われるが、しょせん会計は一つの尺度による企業の”見え方”に過ぎない。今の日本人が当たり前にcm(センチメートル)を使っているように、やってしまえば案外慣れるのではないか。

・短期の業績結果である「P/L重視」よりも、中長期の業績結果であり財務状態を重視する「B/S重視」のほうが、企業を評価する上で適切と考える。このため、IFRS導入には意義があると考えている。

・商社・卸売業のいわゆる「右から左に流して口銭だけを稼ぐ(付加価値のない)取引」において、IFRSでは従来の粗利(売上総利益)を売上高と見なすとしている。これによって、流通業界の各社の実力を財務諸表により把握しやすくなるのではないかと期待している。

・業務プロセスが大きく変わる可能性がある。それを逆にチャンスと捉えて、業務改善を図りたい。

・あくまで広くお金を集めるためのツールであるという理解である。従って、それが必要だと思えばそれに対応すればいいのであって、これに対応しなければグローバル化、あるいはこれに対応しなければ日本は国際社会の中で孤立するというような脅迫めいた話をする者がいるから、ややこしくなるのだと感じる。