日経コンピュータがITpro会員4001人を対象に実施したIFRS(国際会計基準)意識・動向調査によれば、IFRSが最も影響する情報システムは「財務会計システム」がダントツ。プロジェクト経験者はほかに、「固定資産管理システム」や「販売管理システム」への影響の大きさを指摘する。

固定資産管理や販売管理に注意

 IFRS対応は情報システムに大きな影響を与えると考えている企業が多いことは、図2の結果からも分かる。ただ、ITベンダーとユーザー企業ではやや意識に差があるようだ(図1)。

図1●IFRSが情報システムや自社のIT戦略に与える影響について、どう思うか
図1●IFRSが情報システムや自社のIT戦略に与える影響について、どう思うか

 ITベンダーは影響を大きめに捉える傾向がある。「非常に大きい」はユーザー企業の20.7%に対して25.3%、「大きい」はユーザー企業の48.3%に対して52.5%と、いずれもITベンダーが上回った。

 ユーザー企業は影響を小さめに考える向きが多い。「小さい」と回答したのはITベンダーの11.9%に対して16.5%、「影響はない」はITベンダーの7.8%に対して、10.4%だった。予想に基づく回答が含まれている点を踏まえても、冷静に状況を判断しようとするユーザー企業の姿が見えてくる。

 どの情報システムに対する影響が最も大きいかも尋ねた(図7、最大三つまでの複数回答)。最も多かったのは「財務会計システム」である。会計基準への対応である以上、当然だろう。

図2●IFRSの適用で影響が大きい情報システムはどれだと思うか(最大三つまで)
図2●IFRSの適用で影響が大きい情報システムはどれだと思うか(最大三つまで)

 第2位以降の結果は、プロジェクト経験者と非経験者で異なる。非経験者では、第2位は「連結会計システム」だった。一方、経験者では、ほぼ半数が「固定資産管理システム」を挙げ、連結会計システムを上回った。

 「販売・購買管理システム」も差が大きかった。非経験者では14.2%だったのに対して、経験者では26.0%が挙げていた。

 会計に関わるシステムがIFRS対応の影響を直接受けるのは、非経験者でも想像がつく。これに対して、固定資産管理システムや販売・購買管理システムがIFRSの影響を受けるというのは、ある程度IFRSの知識を持ち、プロジェクトに実際に関わった人でないと実感がわきにくい。これからIFRS対応を進める情報システム部門は注意する必要がある。

 日本でのIFRS適用方針については、2012年も引き続き金融庁企業会計審議会で議論を進めていく。2011年末時点で、検討すべき11項目のうちようやく3項目に関する議論が終わったところであり、早急に結論が出る可能性は極めて低い。

 それでも連結財務諸表のみを適用対象とする「連単分離」の方向性が浮上するなど、着地点に向けて議論は進みつつある。収益認識などIFRSの変更も進んでいる。最新動向を把握しつつ、IFRS対応を自社の経営に生かす姿勢が大切になる。