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 米国で問題があるとされている原発はいくつかあるが、104基すべての原子炉を精査するわけにはいかない。ここでは、二つの原発を取り上げる。

 一つは、全米一の大都市であるニューヨーク市からわずか40km圏内にあるニューヨーク州Buchanan市のIndian Point(図7の黄色の点)だ。大都会の近くに存在し、地震の危険が一番大きいと言われている。

図7●原発の位置。Inidian Point(黄色の点)、Diablo Canyon(緑色の点)、San Onofre(ピンク色の点)
図7●原発の位置。Inidian Point(黄色の点)、Diablo Canyon(緑色の点)、San Onofre(ピンク色の点)

 もう一つは、カリフォルニア州の太平洋に面するPG&E社が運営するDiablo Canyon(図7の緑色の点)である。サンディエゴ近郊に設置されているSan Onofre原発(図7のピンクの点)同様、日本と同じ環太平洋火山帯に位置し、既知の断層のほか新たに発見された断層が存在する。地震、津波、バックアップ電源喪失などの可能性を完全には否定できず、福島第一原発の事故に通じる要素が多い。

Indian Point

 Indian Pointで非常事態が起これば、ニューヨーク市および周辺の住民1700万人以上を避難させる必要が生じる。単にニューヨーク市に近いから問題というだけでなく、新たに発見された断層による地震の危険が指摘されている。大事には至らなかったが、過去には小規模の問題が生じたこともある。

 米国では多くの原発が内陸部に設置されているので、津波の影響はあまり考えられない。設置場所は人口の多い都市部からはかなり離れて建設されていることが多い。その例外が、Indian Pointなのだ。Indian pointはニューヨーク州Buchanan市に位置し、全米で一番大きい都市であるニューヨーク市の北端からわずか20マイル(32km)に位置している。マンハッタンの中心までは30マイル(48km)だ。経口摂取被爆地域とされている80km圏内には、ニューヨーク市と西に隣接するNewark市(ニュージャージ州)、北に隣接するコネチカット州周辺の中規模都市がすっぽりと含まれる。Indian Point原発の半径10km内に居住する住民は30万人弱だが、半径80km内に住む住民の総数は1700万人とも1800万人とも言われる。

 実際に避難が必要なのはせいぜい風下の8km地点であろう。しかし、大都会の近くで緊急事態が生じたときにすべての人が冷静に行動するという保証はない。パニックが起こり収集がつかなくなる可能性は否定できない。

 図8に、拡大したニューヨーク市とIndian Pointの位置関係を示す。

図8●ニューヨーク市(緑色の点)とIndian Point(青色の点)の位置関係。二つの間にあるのはHudson川
図8●ニューヨーク市(緑色の点)とIndian Point(青色の点)の位置関係。二つの間にあるのはHudson川