中国でBI(ビジネス・インテリジェンス)ソリューションを提供しているITベンチャーが北京宇動源科技だ。同社は日本のBIソフト大手のウイングアークテクノロジーズを傘下に持つ1stホールディングス(1stHD)と資本提携し、合弁会社を設立する計画だ(関連記事)。一見すると中国市場で競合しそうな日中のBIソフト開発ベンチャーが手を組む狙いは何か。北京宇動源科技の艾潤 総経理に聞いた。
(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ



写真●北京宇動源科技の艾潤 総経理
写真●北京宇動源科技の艾潤 総経理

会社の概要を教えてほしい。

 BIソフトの開発を手掛けている。競合は、米IBMやオラクル、独SAPなど、BIソフト企業を買収して欧米IT大手だ。

 私は、米IT企業でBI開発に携わった経験を持ち、中国でもBIソフトが必要になると考えてこの会社を設立した。

 中国では大手の顧客になるほどBIソフトのカスタマイズが必要で、欧米IT企業のBIソフトのパッケージでは対応できない需要も多い。そこに商機があると考えた。

開発・販売しているBIソフトの特徴は?

 完全なパッケージでもなく、独自に開発するスクラッチ開発でもない、中間的な製品だ。BIソフト開発に必要な機能を部品として取りそろえているプラットフォーム的な製品だ。

 顧客は必要な機能に応じて、様々なコンポーネントを組み合わせて、独自のBIソフトを低コストで早期に開発できる。

 併せて、上流工程では業種ごとに導入を簡易化できるテンプレートも取りそろえている。

1stホールディングスとの提携の経緯や狙いは?

 2002年の会社設立以来、自力で事業拡大を図ってきたが、さらに成長を加速するため、資本をどこかから受け入れる必要があると考えていた。国内外の様々な企業と出資受け入れについて交渉を重ねてきた。

 2011年春に、1stHDからアプローチがあり、内野弘幸社長と面会した。BIソフトを開発・販売する企業同士として、深い話ができた。BI製品の開発に対する思いが似ていると考えたとともに、BIソフトの開発手法、考え方で共感できる部分が多かった。

 中でも、使いやすさや分析機能のきめ細やかさ、製品に対する品質管理の厳しさは、日本ならではのノウハウがあると感じた。1stHDと組めば、自社の開発力が向上し、製品開発のマネジメントのノウハウも得られると考えて合弁会社の設立に向けた資本提携に踏み切った。

 BIソフトを互いに売るが、カスタマイズすることが前提で大手企業向けの我が社のBIと、カスタマイズが必要なく設定だけで導入できる中堅企業向けのウイングアークのBIは競合することなく顧客規模ごとに売り分けられる。そのため、競合せず提携のシナジーがあると考えた。

日本製ソフトの中国における将来性は?

 中国のIT市場の発展は非常に早く、企業が大きくなるにつれてニーズが変化したり多様化したりする。欧米IT企業のパッケージソフトももちろん需要はあるが、標準にしばられるのを嫌う企業は、別のソフトを採用したいと考え始めている。

 こうした中で、設定だけで幅広い用途で対応できたり、カスタマイズができたりする柔軟性が高い日本のパッケージソフトは、顧客の要望にできるだけ対応しようとする日本企業のイメージにも重なり、中国企業から十分に支持される可能性がある。

 品質が高く、きめ細やかに顧客の業務に対応できる日本製のソフトやITサービスと、現地での市場や顧客のことを分かっている中国企業のタッグは非常に強力だと思う。