大連創盛科技はオフショア開発受託を主要事業とする中国のITベンチャー。同社は2011年8月、日立製作所などと提携し合弁会社を設立した。合弁会社を通じて、クラウドを中心とした中国市場向けITサービス事業の展開を加速する計画だ(関連記事)。大連創盛科技の謝銀茂 董事長兼総経理に、日立グループとの提携の経緯や今後の戦略について聞いた。

(聞き手は宗像 誠之=日経コンピュータ



写真●大連創盛科技の謝銀茂 董事長兼総経理
写真●大連創盛科技の謝銀茂 董事長兼総経理

日系IT大手である日立製作所グループと提携した背景は?

 2000年に、オフショア開発の受託をメイン事業とする大連創盛を設立した。日立製作所グループからもオフショア開発を受託しており、仕事が増える中で会社も大きくなってきた。

 一方で日立グループとしても、中国のIT市場への注目度が高まっており、中国での人脈を持ち、ビジネスのノウハウを持つ当社が手伝えることが多いのではと考えた。

 中国でもクラウドは注目されており、ITサービスの需要は増す。いつまでもオフショア開発中心ではなく、サービスやソリューション分野にも事業を広げたかった。日立グループとの関係をオフショア開発のパートナーからビジネスパートナーへ転換し、互いにメリットのある形で我々も成長できないかと考えた。

オフショア開発からは完全に脱却するのか?

 オフショア開発の事業は今後も拡大する計画で、むしろ強化する。ただ、単純な業務をこなす従来型のオフショア開発からは抜け出し、より難易度が高く、付加価値が高い開発を手掛けられるようにしていきたい。

 とはいえ、売上高に占めるオフショア開発の割合は減っていくだろう。中国でもITサービスの市場が本格的に立ち上がり始めているからだ。今回の提携による合弁会社を通じて、日本のソリューションやクラウドの技術を日立グループから吸収して中国向けに展開していきたい。

 合弁会社には、大連市政府系の投資会社も出資している。大連市は、新しい開発特区である「金州新区」への企業誘致を増やし、税収を増やしたいと考えている。合弁会社が建設しているデータセンターは、2012年秋に完成予定だ。このセンターは金州新区の初のデータセンターとなるため、政府の期待も高い。金州新区に拠点を持つ国内外の企業からの受注だけでなく、政府のIT関連の仕事も請け負えるメリットがある。

日系企業の資本が入る会社が、中国で政府系の仕事を受注できるのか?

 政府向けの仕事は二種ある。一つは、機密性が高い情報を扱う政府系の基幹システムで、もう一つは住民からの申請業務用など外部向けのシステムだ。

 基幹システム部分の開発や運用などには日系IT企業や、日系企業との合弁会社が入り込む余地はない。しかしもう一つの外部系システムは、日系IT企業の資本が入る合弁会社でも手がけられる。日立との合弁会社では、大連市向けの電子政府系のソリューションやクラウドサービスも手掛けていく計画だ。

欧米のIT企業と比較し、日系IT企業の中国における将来性についてどう考えるか?

 欧米のIT企業は早くから中国に進出しており、世界市場での製品シェアも高いので、中国でも認知度は高い。しかし、これらの企業は世界標準のパッケージソフトに中国企業のやり方を合わせようとする発想だ。早期に欧米IT企業のソフトを導入した中国企業は、この点に戸惑っているところもある。中国の多くの企業は、システムを導入する際にカスタマイズを求める。

 日本の企業もカスタマイズを好む傾向があり、日系IT企業は、こうした日本の顧客に対応してきた。パッケージ導入やシステム開発の際に、顧客の要望を聞く柔軟性を持つ日系IT企業との合弁事業について、実は中国政府や企業も非常に注目している。