「神経」を張り巡らせ、データを大量に取得しても、分析して現場に指令を出せる仕組みをうまく築けなければ、成果は望めない。ダイキン工業は、大量データの分析結果から特徴的なパターンを見つけ出し、最後は現場で突き合わせることで、データを使いこなせるようになった。
ダイキン工業
コンビニ5000店の温度異常を検出、故障の自動予測や省エネ支援で差異化
「店内設備の運転データは分析次第で宝の山になる」。コンビニエンスストア向けに空調機や冷凍・冷蔵庫とその監視サービスをセットで提供する「コンビニパック」(図)の開発者である、ダイキン工業低温事業本部の藤本遊二冷設システム(国内・欧州)統括マネージャーはこう言い切る。コンビニパックは2002年の提供開始以来、導入店を拡大している。コンビニ大手3社のうち2社に採用され、これまでに約5000カ所で稼働中である。
ダイキンは以前から、オフィスビルや店舗に設置した自社の業務用空調機を通信回線経由で監視する「エアネット」というサービスを展開していた。空調機の運転データを「エアネットコントロールセンター」に集約し、24時間365日体制で稼働状況を監視。故障の予兆が見えたら、すぐさま保守担当者が駆けつける。こうした空調機を止めないサービスが好評を博してきた。
もっとも、今となっては空調機の保守・運用に通信回線を使い、遠隔監視する取り組み自体は珍しくない。ダイキン以外にも、エレベーターや警備機器の事業者が似たようなサービスを提供している。そこでダイキンは一歩進め、自社が得意とする空調機だけでなく、温度管理が必要な設備を丸ごと請け負うことで特徴を打ち出した。他社製の設備も含めたコンビニの店内にある全ての温度管理機器を「末梢神経」ととらえ、データをコントロールセンターに集約する。
コンビニパックでは空調機以外の他社製の冷凍・冷蔵庫にも、エアネットで培った独自のセンサーを取り付け、データの取得対象に加えた。そして、空調機や冷凍・冷蔵庫それぞれについて、運転時間や圧縮機(コンプレッサー)の出力推移、庫内外の温度や湿度、扉の開閉回数まで毎日取得できるようにした。
冷凍・冷蔵庫のノウハウ不足を分析で補う
とはいえ、事業拡大の過程では手探りが続いた。「ダイキンには冷凍・冷蔵庫の管理ノウハウが無かった」(藤本統括マネージャー)からだ。自社の弱点を補うためにも、データ分析には積極的に取り組んだ。
当初はセンターに集まったデータをダイキンの監視担当者が自分の目で見て異常を判断していた。それだけの人手をかけていたわけだが、「圧縮機のフル出力状態が続いているので故障が近い」と考えて保守担当者を現地に向かわせたら、実は設備に暑い西日が当たって温度が上昇しているだけだった、ということもあった。こうした分析の経験を積むまでに相当の時間をかけ、その度に現場確認を繰り返した。
空調機や冷凍・冷蔵庫はいつかは壊れる。だからといって「壊れてから修理するのは大変だ。24時間営業のコンビニは空調機や冷凍・冷蔵庫が故障すると、販売に直接影響が出る。動かなくなる前に故障を予測したい」(藤本統括マネージャー)。