ここまでの何カ月かの連載では、企業がソーシャルメディアを自分たちのマーケティングならびにコミュニケーション活動に利活用していく際に当たって、どういった点を意識していけばよいのかという点について書いてきた。その多くは、筆者自身が現場で直面してきた課題でもあるし、またそれに対するアプローチも筆者自身が試行錯誤する中で見いだしてきたものだ。かつて筆者自身で実際にやってきたことをいろいろと棚卸しする機会も多かった。

 だが、今回からはまだ触れていないテーマについて書いてみようと思う。それは「BtoBビジネスとソーシャルメディア」についてである。

これまでの企業ソーシャル活用はBtoCが主流

 企業が自分たちの施策にソーシャルメディアを利活用する動きは進んできているが、そこで語られている多くはBtoCビジネスを前提としたものというのが現状である。一方、BtoBビジネスにおけるソーシャルメディアの利活用に関しては、なかなか語られていない。

 いや、「語られない」というよりも「語れない」と言った方がよいかもしれない。BtoBビジネスでのソーシャルメディア利活用に関しては、少なくとも現時点においては、まだそれほど多くの取り組みがなされていない。また、そもそもノウハウが表に出づらいという側面もある。

 そんな中、これから何回かで、あえてBtoBビジネスにおけるソーシャルメディアの利活用について考えてみたい。成功しづらいと一部では言われているものの、何らかのソリューションを導き出すためのヒントがあるはずだ。

 まず意識しておきたいのは「ソーシャルメディア」というツールの位置付けである。もちろん、これはBtoCビジネスでも意識する必要はあるが、特にBtoBビジネスの場合は「ソーシャルメディア」をツールというよりも、むしろインフラとして位置付けることを強く意識する必要がある。

ビジネスの相手とコミュニケーションするインフラ

 たとえば、顧客企業に対して常時実施しているコミュニケーション活動があるだろう。この一部を、たとえばFacebookなどにおけるソーシャルメディア上のコミュニケーションに置き換えることで、これまでのコミュニケーション活動に対して、よりスケーラビリティを付加することも可能になる。こうすることで、直接訪問、電話での会話、そしてメールでのやり取りといった、これまで実施していたコミュニケーションの隙間を埋めていく感覚で、顧客企業、あるいはパートナー企業に対して、より積極的なコミュニケーションを取る機会が見出せてくるはずだ。

 もちろん、こうした活動はソーシャルメディアが注目される以前から、様々なツールやシステムを使って実施されてきている。そこにあえてソーシャルメディアを利活用していくメリットは、いわゆるインフラに対するコストを限りなく低く抑えられ、かつ導入に至るまでの期間を短く抑えることができるという点にある。

 その一方で、自分たちで所有していないソーシャルメディアというシステムを使うことに対するセキュリティ面での懸念がある。もちろん、かゆいところに手が届くような機能を付加するのも難しい。だが、それほど大規模ではない範囲で、まず手軽に始めてみるという目的であれば、十分に使えるものになるはずだ。

 実際、特に海外では顧客企業やパートナー企業と継続的なコミュニケーションをとるに当たって、自前でプラットフォームを構築するやり方だけではなく、ソーシャルメディアを活用するという選択も出てきている。ソーシャルメディアをいわゆる「メディア」としてではなく「ツール」もとい「インフラ」として割りきって考えることで、その利活用の仕方にも幅がもたらされるはずだ。

熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)
リーバイ・ストラウス ジャパン デジタルマーケティングマネージャー
熊村 剛輔(くまむら ごうすけ)1974年生まれ。プロミュージシャンからエンジニア、プロダクトマネージャー、オンライン媒体編集長などを経て、マイクロソフトに入社。企業サイト運営とソーシャルメディアマーケティング戦略をリードする。その後PR代理店バーソン・マーステラでリードデジタルストラテジストを務め、2011年12月よりリーバイ・ストラウス ジャパンにてデジタルマーケティングマネージャーとなる。