Fedoraプロジェクトは2011年11月8日、Linuxディストリビューションの新版「Fedora 16」(コードネーム:Verne)をリリースした。このFedora 16の注目点はクラウドだ。クライアントとの連携に至るまで様々なツールや機能が含まれている。

 半年に1回メジャーアップデートされるLinuxディストリビューション「Fedora」の新版がほぼ予定通りリリースされた。コードネーム「Verne」の「Fedora 16」だ(写真1)。新版では、Linuxカーネル3.1.0が採用され、デスクトップ環境は「GNOME3.2」や「KDE Software Compilation 4.7」にアップデートされている。

写真1 Fedora 16
写真1 Fedora 16
デスクトップ環境は「GNOME3.2」や「KDE Software Compilation 4.7」にアップデートされている。

 このほかにも多くの新しい機能や改良点がある新版だが、特に多数のクラウド関連ツールが加わったことと、起動処理における改善は要注目だ。

様々なクラウド関連ツールを実装

 Fedora 16では多種多様なクラウド関連ツールが新しく追加された。

 最も注目すべきツールは、Aeolusプロジェクトが開発する「Aeolus Conductor」だ。同プロジェクトは、単一のWebユーザーインタフェースを使って、プライベートクラウドからパブリッククラウドまで、様々なクラウド環境で仮想マシンの構築・管理を実現することを目的としている。Aeolus Conductorは開発しているソフト群のうちの一つ(写真2)。様々なタイプのクラウドに対してのインスタンス作成および、その管理を可能にするユーザーインタフェースとツールからなる。

写真2 Aeolusプロジェクトのサイト
Aeolusプロジェクトは、単一のWebユーザーインタフェースを使って、プライベートクラウドからパブリッククラウドまで、様々なクラウド環境で仮想マシンの構築・管理を実現することを目的としている。

 2011年11月下旬時点において、「Amazon EC2」「Rackspace」といったパブリッククラウドと、「Red Hat Enterprise Virtualization」「VMware vSphere」「Eucalyptus」「OpenStack」といったクラウド基盤ソフトの両方で利用できる。

 クラウド環境に最適なスケールアウト型の分散ファイルシステムを構築するソフト「HekaFS *1」も興味深い。これは「GlusterFS」というソフトに、暗号化や認証などのセキュリティ機能の追加やマルチテナントへの対応などのクラウド環境での利用を想定した機能拡張を施したもの。

 HekaFSにはまだ開発段階である部分が多いが、米Red Hat社による、GlusterFSの開発元である米Gluster社の買収が先ごろ完了したため、HekaFSおよびGlusterFSがどういった進化を遂げていくのかを注目したい。

 これらのほか、インタフェースに「deltaAPI」、バックエンドに「Condor」を実装し、イメージファイルから多くの仮想マシンを作成できるIaaS(Infrastructure as a Service)型クラウド向けのツール「Condor Cloud」や、単一ノード上で動く仮想マシン内のアプリケーションサービスに高可用性の仕組みを提供する「Pacemaker Cloud」、またローカルやネットワーク経由でシステムを監視・管理する「Matahari」、そしてパブリックやプライベートクラウド向けIaaSを構築・運用するためのOpenStackが加わっている。