バックオフィス系の業務ではERPパッケージを使うことが少なくない。その場合も、可能な限りパッケージが持つ業務プロセスを使い、個別要件を加えないことが大切だ。これにより、グローバル展開やM&Aといった変化に対応しやすい基幹系が作れる。

 例えばアデランス。旧アデランスと旧フォンテーヌの経営統合を乗り切り、今後のグローバル展開やM&Aに乗り出すために基幹系を刷新した。

 同社は主にバックオフィス業務を支える基幹系を、日本オラクルが提供するERPパッケージ「Oracle E-Business Suite(EBS)」を使って構築している。会計と購買システムが2011年8月に稼働し、販売・物流システムが12年1月に稼働する予定だ。

 パッケージ導入時の方針は「利用部門からの要件よりも、導入期間の短期化と今後の展開を優先する」というものだ。経営統合により現在のアデランスが発足したのは2010年9月。経営陣が「経営統合の効果を短期間で出す基盤として、基幹系の稼働を求めていた」とアデランスの廣瀬拓生情報システム室長は話す。

 アデランスにとって基幹系刷新の目的の一つは、旧アデランスと旧フォンテーヌ両社の重複業務をスリム化することによる業務効率化だ。新基幹系を利用した業務効率化により、2期連続の営業赤字から脱出して黒字化できる体質になることを目指している。同時に中国などの成長市場への展開を推進する計画だ。海外はM&Aを中心に拡大しているので、基幹系がバラバラだった。

標準化と費用抑制を同時に

 業務効率化とグローバル化の推進を両立するためにアデランスは、Oracle EBSでカバーする会計、購買、販売・物流の業務プロセスを基本的に変えずに導入している。

 「プロジェクトの開始当初から、パッケージの持つ標準の業務プロセスをそのまま使うことを前提に導入を考えていた」と廣瀬室長は強調する。早期に業務を標準化して経営統合の効果を出すには、実際の業務をパッケージに合わせることが早道だった。

 経営統合に当たり、旧アデランスと旧フォンテーヌの間接部門は組織を統合した。両社で異なっていた業務の進め方を、Oracle EBSの持つ業務プロセスに合わせて変えた。ドットインパクトプリンターで作成していた複写式の伝票も全て電子化し、Oracle EBSの標準画面を利用するように促した。「現場の業務は大きく変わった」と廣瀬室長は話す。

 標準機能にこだわったのは、短期間でOracle EBSを導入するためでもあった。2社の業務プロセスをヒアリングしながらベストな業務プロセスを作るのでは時間がかかる。経営統合の効果を早期に引き出すためには、1年以内の稼働が必須だった。

 ERPパッケージに手を加えずに導入することは、今後のグローバル展開や法規制対応を柔軟にできるメリットもある。バージョンアップにより最新の制度や法規制を反映したパッケージを導入しやすくなるからだ。

 アデランスはOracle EBSの導入のほかに、ネットワークの張り替えなども含めて、約10億円程度の投資を見込んでいる。