「ソーシャルメディアとは何なのか」「何の役に立つのか」。昨年の夏くらいから知人や上司、部下、後輩にこう聞かれることが多くなった。今年になっても相変わらず多くの人に同じことを聞かれている。
「今頃何を?」と専門家から失笑されるかも知れないが、ソーシャルメディア、Facebookと騒いでいても、これが日本の多くの企業内での実情かと思う。筆者自身は3年前からTwitterを、2年前からFacebookを利用し始めた。ソーシャルメディアの利用歴としては長い方ではないが、それでも人並みには使いこなしているという自負はある。自分の感覚としてはかなりの人がソーシャルメディア、特に実名登録が基本で比較的場が“荒れない”と言われるFacebookを利用し、それなりに使っている感覚があった。しかし実際には「何ができるのか」「何が楽しいのか」という質問を受けるのだから、ソーシャルメディアはまだまだ普及してないのだと痛感する。
筆者はFacebookを自分の仕事を進めるうえで「とても便利なもの」として使っている。この連載も、ある記事に対するFacebook上のコメントがきっかけになっている。筆者はソーシャルメディアを自分の仕事に使っており、その効果を実感している一人である。
筆者の周りにはソーシャルメディアを知らない人も多いが、便利に使っているひともかなりいる。筆者は社会人150人規模の社会人交流会、勉強会を主宰しているが、交流はFacebookがベースである。こういう人はソーシャルメディアが大好きで「何かに使いたい」「これからの社会に完全に定着する」と熱っぽく語る。
一方で、「ソーシャルメディアはよく分からない」「つまらない」「気持ち悪い」という人もかなりいる。こういう人はソーシャルメディアは一時の流行でそのうち廃れるとそっけない。
同じサービスでこれだけ賛否が分かれるものも珍しいと筆者は思っている。「何故、肯定、否定の相反する意見があるのか」それが筆者がこの記事を書こうとした動機である。
二つの立場でソーシャルメディアを見る
最初に筆者の二つの立場を説明したい。一つは企業のシステム企画部門の課長としての立場である。筆者は企業の経営戦略の実現のための情報戦略を立案したり、導入をマネジメントする仕事をしている。
この立場で重要なのは「どの情報技術(IT)がどの業務に役立つのか」という視点である。この仕事では常にITを使ってよくなる業務は何かを模索する。いつも有効な企画があればよいが、実際にはそのような良い企画はなかなか立案できない。年に2、3、見つかれば良いほうである。
このように企画が見つかっても、それで完了にはならない。その次には「正しく導入できるのか」「導入後に維持できるのか」という観点が必要だ。Facebookで考えるなら、以下の3点を熟考することが必要になる。
- Facebookがどの業務で役立つのか?
- Facebookを導入できるのか?
- Facebookでの業務を維持できるのか?
企業でFacebookを導入するためには、どのような効果があるのか、どうすれば導入、維持できるのかを社内に説明することが重要になる。この連載ではこの点についても触れることができればと思っている。
もう一つは教育評論家としての立場である。専門はヒューマンマネジメント論で、その中心となるのは「目的達成型コミュニケーション」と筆者が呼ぶ戦略的コミュニケーションである。
ソーシャルメディアを使った「他人に対する目的達成型の戦略的コミュニケーション」を、筆者は「ソーシャルコミュニケーション」と呼ぶ。これを企業での実務に応用して具体的な「人間の行動のコントロールについて考えて理論化すること」が筆者の研究テーマである。
この連載は、筆者の「二つの立場」で経験したこと、感じたこと、考えたことを、現場で実際に起こった内容を事例に書くことにしたい。