ビジネスで革新的な成果を上げるためには、一般にアイデア(=ひらめき)が重要と考えられている。本書は、アイデアの着想よりそれを実行する「アイデア実現力」こそがイノベーションを生むと主張し、アイデア実現力を高める方法論を解説する。デザインや出版など様々な分野のクリエイターのほか、革新的な製品やサービスで成功した企業での事例が豊富で、あらゆるプロジェクトに適用できる方法論だ。
著者の見解では、多くのクリエイターは100のアイデアを思いついても、現実にはそのうちの一つしか実現できていない。アイデアの実現性を高めて成功している企業が米アップルや米ウォルト・ディズニー、米ザッポス、デザイン事務所の米IDEOなどである。
著者はこれらの事例から、アイデアの実現力を三つの要素に分け各能力を高める手法を提唱する。三つの要素とは、(1)物事をきちんと整理して次々と片づける「整理力」、(2)多様な人材をプロジェクトに引き込みコミュニティーの力を利用する「仲間力」、(3)戦略に基づきプロジェクトを率いる「統率力」──である。
一つめの整理力では「アクションメソッド」と呼ぶ手法を提案している。すべてをプロジェクトと見なして「アクションステップ(すべきこと)」「レファレンス(参考資料)」「バックバナー(後回しにすること)」の三つの要素に落とし込み、実行を管理する方法である。伝統的なプロジェクトマネジメントは計画策定と上意下達に重点を置くが、この手法は個人の臨機応変な判断を許容している点に特徴がある。
二つめの仲間力では、能力が異なる人々との交流を推奨するほか、仲間からフィードバックを得る方法などを解説する。仲間の存在によって、アイデアを最後まで実行する責任が生まれる効果も指摘している。三つめの統率力では、遊びの要素を取り入れやる気を引き出すなど、チーム力を高める様々な手法を紹介する。
プロジェクトの創造性を高めたい人に、ベストプラクティスが詰まった本としてお薦めしたい。
アイデアの99%
スコット・ベルスキ著
関 美和訳
英治出版発行
1680円(税込)