中国でBIソリューションを提供しているITベンチャーが北京宇動源科技だ。同社は日本のBIソフト大手のウイングアークテクノロジーズを傘下に持つ1stホールディングスと資本提携する。
「BIの事業でシナジーが見込めることに加え、日本式の組織管理や開発プロジェクト管理など、マネジメントのノウハウを学べると考えた」。北京宇動源の艾潤 総経理(写真10)は、提携の狙いを話す。
同社はベンチャーだが、米IT企業でソフト開発の経験を持つ艾 総経理が率いており、技術力の高さで定評がある。事実、中国の大手ガス会社や石油会社にBIシステムを導入した実績がある。
北京宇動源のBIは純粋なパッケージではなく、様々な機能を備えたコンポーネントの集まりだ。中国企業から頻繁に求められるカスタマイズに応じるために柔軟性を持たせている。一方、ウイングアークのBIはカスタマイズが必要なく、設定だけで幅広い分析需要に対応できる。異なる強みを持つソフトを組み合わせて中国の顧客の多様なニーズに応えるのが提携の狙いだ。
両社はまず、互いの製品を売る共同販売から始める。政府系機関や大手企業には北京宇動源の製品をソリューションとして提供するが、中堅中小企業にはウイングアークの製品を売り込む。「互いのソフトを連携させた次世代BIソフトの共同開発も視野に入れている」。1stホールディングスの内野弘幸社長は、こう述べる。
慎重に戦略転換を図る中国IT企業も
大手からベンチャーまで、中国のIT企業がこぞって国内ITサービスの市場開拓に舵を切るなか、長期的な視野で慎重に戦略転換を図る中国IT企業もある。その代表格が、日本向けのオフショア開発受託大手の大連華信計算機技術(DHC)だ(写真11)。
「日系IT企業と合弁会社を新設する計画は今のところない。仮に作る場合は、投資のリターンがどれだけ見込めるかなどを念入りに検討する必要がある」とDHCの劉軍総裁(写真12)は話す。
合弁設立には慎重なDHCだが、中長期的には売上高に占めるオフショア開発の比率を下げて、中国市場向けの売り上げを増やす方針だ。現在は全体の約25%を占める中国市場向けの売上高を、2~3年以内に40%まで高める計画である。
北京に本社を構える中訊軟件集団も、中国向けの事業を長期戦略と位置づける。同社は大和総研ビジネス・イノベーションとの合弁会社「訊和創新科技(北京)」を2011年3月に設立した。
ここで、まずは大和総研グループから受託するオフショア開発の強化を図る。その後、合弁会社での協業によって「日本のプロジェクト管理などのノウハウを吸収し、中国市場向けの事業展開に生かす」(中訊軟件の王緒兵総裁、写真13)。訊和創新の中村明総裁は中国でのITサービス提供開始について「5年以内をメドとする」と述べる。
今後も日中IT企業の協業が増えるのは間違いない。その成否は、文化の壁を越えて互いの強みを持ち寄り、シナジーを生み出せるかどうかにかかっている。