筆者は現在、検索エンジンマーケティング(SEM、関連記事)、特にリスティング広告運用の支援を専門の仕事としている。あえていずれかにくくるならば、「検索」の側にいるスペシャリストである。

 しかし2011年から、継続的に支援しているお客様で、ソーシャルメディアの活用にも取り組む動きが活発になってきた。活用の目的や指標、コンテンツの企画、運用ルール、コミュニケーションなどを含め、お客様と一緒に試行錯誤しながら取り組んでいる。

 SEMのスペシャリストでありながらソーシャルメディアにも取り組んでいるのはなぜか。企業の「検索」と「ソーシャル」双方に立ち会う現場で、実に豊かな発見があるからだ。

 ビッグデータが今後のビジネス成功の鍵を握るといわれるなか、検索エンジン、ソーシャルメディアから得られるデータや気づきは、単体ではなく横断して活用することが必須になっていくだろう。

 そこでこの連載では、検索エンジンとソーシャルメディアの双方に取り組む現場で見えてきた新たなWebマーケティング手法を探り、紹介していきたい。

検索エンジンとソーシャルメディアは対立しない

 2011年10月に開催されたデジタルマーケティングカンファレンス「ad:Tech tokyo」で、「Search is NOT DEAD」という、風変わりなタイトルのセッションがあった。検索エンジン提供企業、および検索エンジンマーケティングの第一人者を含むスピーカーが「検索」と「ソーシャル」を取り巻く状況と、今後の検索エンジンマーケティングの可能性について、それぞれの異なる立場から語った。

 セッションの概要はこうだ。「ソーシャルメディア利用者の爆発的な広がりに伴い、一部で『検索の時代は終わった、これからはソーシャルの時代だ』と語られる風潮がある。しかし、両者は役割が異なり、入れ替わったり、対立したりするものではない。検索エンジンは、ソーシャルメディアでのシグナル(情報)をコンテンツの質の評価に取り入れるなどして、これからもさらなる進化を続けていくだろう」。

 それらの展望について、基本的に筆者は共感する。実際、2012年1月に米グーグルは「Search plus Your World」を発表した(関連記事)。今後検索結果の各所に、GoogleのソーシャルネットワーキングサービスであるGoogle+のパーソナライズ化された情報が盛り込まれるようになる。「検索」と「ソーシャル」をめぐる進化のスピードは想像以上に早い。

 ただ、マーケティングの現場では、変化は少し違った形で起きてもいる。

ソーシャルメディア単体の活用で投資対効果を得られるか

 ご存じのように、検索エンジンマーケティングでは「検索キーワードにユーザーの意図が表れる」と考える。リスティング広告とは、自社の製品・サービスを利用する見込みの高い検索キーワードを予測し、入札して検索結果内に表示させる手法である。

 例えば、不動産情報サイトを運営する企業が広告を出稿するならば、「世田谷区 中古マンション」などのキーワードに入札する。明確な興味や目的をもって検索したユーザーを検索結果で待ち受け、検索したその瞬間に広告を表示できるのが強みだ。

 キーワードが実際ユーザーにどれだけ検索されているかは、精度の高い計測ツールで確かめられる。さらに、広告の表示回数やクリック数、クリック率、コンバージョン数(関連記事)、コンバージョン1件当たりのコストといったパフォーマンスの詳細を、広告の管理画面で確認しつつ、アクセス解析の数字も併用して仮説検証を重ねられる。この活動により、投資対効果を高められる。