富士通やソニー、日本政府までハッカーに狙われて、衝撃が広がっている。こうした事件に触れると、一般組織を食い物にする劣悪なサイバー犯罪集団の増殖と考えがちだが、世界を見るとそう単純な構図ではないことを本書は教える。

 筆者は英フィナンシャル・タイムズなどでこの問題を追ってきた記者。狙われる側にも悪質な経営が少なくないことや、国境を越えた捜査に及び腰な警察の実態を描く。さらに2010年に米グーグルが中国政府ともめた例を挙げ、サイバー攻撃への同政府の関与を指摘する。日本では最近、暴力団対策が話題だが、誰かにとって利用価値が高い限り、勢力を増す点でハッカーも共通する。情報管理法の再考に有益。

サイバー・クライム

サイバー・クライム
ジョセフ・メン著
浅川 佳秀訳
福森 大喜監修
講談社発行
2415円(税込)