戦略の実現において、リーダーシップや組織が重要であることは自明だが、往々にして「管理統制モデル」と「自律分散モデル」の2元論で語られがちだ。デロイトグループのコンサルタントらが、経営のみならず化学や歴史、心理学などのグローバルな知見を集め、成果を上げた組織がどのように「一致団結」したかを分析したのが本著だ。

 「指揮者とオーケストラ」「建築家と職人」「キャプテンとスポーツチーム」など8つの「アーキタイプ」に分類して、それを体現した著名人と企業のリーダーシップや組織戦略を詳解する。例えば「指揮者とオーケストラ」では、ヘルベルト・フォン・カラヤン氏とヘルスケア大手の米メドコ社の共通項を探っている。

 各タイプの組織の特徴も抽出し、企業事例で実証している。指揮者とオーケストラの場合は、「明確な役割分担」という特徴で米フェデックスを、「標準化」「メンバーのトレーニングと意識付け」という特徴ではトヨタ自動車を分析している。従業員の自律性を重視する米スターバックスが、実は個人の役割や作業手順を明確に定義した「司令官と部隊」型組織の特徴を備えているといった指摘は新鮮だ。俯瞰視点と実践的な内容を兼ね備えた好著。

As One

As One
ジェームス・クィグリー/メルダッド・バグハイ/近藤 聡/木村 伸幸著
三輪 耕司/浜田 健二監訳
プレジデント社発行
3675円(税込)