標準時間で印刷作業の進捗を評価
大阪シーリング印刷

写真●現場では各作業の標準時間を手掛かりに、前日の作業が適切だったかどうかを議論できるようになった
写真●現場では各作業の標準時間を手掛かりに、前日の作業が適切だったかどうかを議論できるようになった

 現場が行動の良しあしを判断できない評価指標では、問題発見につながらない。こうした観点からKPIを設定し直して成果を上げた1社が、シール印刷大手である大阪シーリング印刷(大阪市)の小倉工場(北九州市)だ(写真)。

 同工場は従来、1日当たりの印刷量を管理対象としていた。1日の目標量は、当日の印刷物の色数や種類などによる難易度を勘案して生産管理担当者が決めていたが、明確な根拠はなかった。勤務時間内に目標を達成できなくても「目標設定に無理があったのか、作業に問題があったのかは現場作業者に判断できなかった」(九州生産部小倉工場の田村薫工場長)。

 こうしたなか、短納期品や小ロットの印刷物の受注比率が年々高まってくると、次第に現場の作業が追いつかなくなった。納期を順守するために重視する「前倒し印刷実施率*」が、2008年上期には69.1%と初めて70%を下回ってしまった。

試し刷りの失敗を防ぐ工夫を生む

 この事態を打開したのが、印刷作業の難易度別に標準作業時間を設けたことだった。トヨタ生産方式のコンサルティング会社、OJTソリューションズの指導を受け、2008年1月から取り組んだ。

 版を取り換える作業を例に取ると、版を載せる、外すなどの動作ごとに平均時間を計測し、それらの合計時間に基づいて標準作業時間を設定した。併せて1日の印刷体制を3時間単位で区切ることで、作業の進捗を検証しやすくした。

 その結果、特に印刷作業時間の約4割を占める準備作業で改善が進んだ。一例は印刷用原紙の置き場の改善である。従来は種類が異なる印刷用原紙を一緒くたにし、パレットに横積みしていた。このため積み上がった原紙の束の下に必要な原紙が埋もれて、準備が遅れることもあった。原紙を車輪付きのラックに縦置きするように変更し、すぐに取り出せるようにした。

 標準時間から大幅に超過する原因の1つである刷り直し作業を防ぐ改善も進めている。インクの浸透不足などは版を目視しても気づきにくく、印刷機を稼働させてから不良と分かることが多かった。そこで印刷担当者が前の製品を印刷中に、準備作業の担当者は版の用意だけでなく、試し刷りまで済ませておくよう作業ルールを変更した。

 作業改善の効果は個別には検証していないが、全体の作業効率は高まっている。標準時間を超過した作業時間は、2008年1月には印刷機1台当たり1日平均129分だったが、2010年11月には同20分に短縮した。同期間で1人当たり残業時間も30%、月平均約12時間減った。前倒し印刷実施率は2010年上期には80.5%に改善した。