ヒアリングの場でITエンジニアがいくら「本音を聞かせてください」と言っても、利用部門の担当者がそれに応えてくれるとは限らない。余計なことを言って他の人に迷惑を掛けたくない、上司批判にならないだろうか、といった意識が働きやすいからだ。

 では、本音を引き出すにはどうすればよいのか。

 プリベクトの北山一真氏(代表)は、ヒアリングの冒頭で、収集した意見の内容を誰が見るのかについて説明する。その上で、オフレコにしたい意見は記録に残さない、と約束する。こうすることで、利用部門の担当者に安心感が生まれるという。

 野村総合研究所の荒生氏は、ヒアリングの場で同時に出席してもらう利用部門の担当者のグループ分けに気を配る。避けるべきは、部長、課長、係長、主任といったように、役職にバリエーションをつけることだ。「上司がいると気を遣って、余計なことは言わない、という雰囲気になりがちだ」(荒生氏)。そこで、職位が異なる担当者は分けてヒアリングする。

同じ目線に立って信頼関係を作る

 アビームコンサルティングの菊池氏は、自分から話をすることで相手の信頼を得て、本音を引き出す。例えば、相手と同じ目線で「いやあ、係長としてグループを束ねるのは大変ですよね。私も経験があります」といったくだけた話をする。「共感できる部分を示し警戒心を解いてもらう」(菊池氏)ためである。

 また菊池氏は、ヒアリングにおいて問題が挙がったときに、「その問題でしたら、同じような話が他社でもありました」のように、他社事例について話すようにしている。「他社の取り組みは、あまり知らないもの。それを話すと相手が興味を覚えて、一気に距離感を縮められる」(菊池氏)。

 最後に、利用部門の担当者から本音を聞けるようになったときの注意点を一つ紹介する。利用部門の担当者が本音を話すようになると、思いつくまま他部門の問題を挙げてくることがある。「あの部門に伝票を回すと、戻ってくるのに4日かかることがある」「顧客ともめるのは決まって、あの部門だ」といったことである。「他部門の問題は、うのみにしない」と、グロースエクスパートナーズの鈴木氏はいう。一方的な思い込みのケースが少なくないので、鈴木氏は必ず相手の部門に確認を取るようにしている。