上記の「問題・要望を整理しながら聞く」ための極意を駆使しても、ヒアリングの場で、利用部門の担当者が思いついたように些末な問題・要望を出してくることがある。これを防ぐ極意を二つ紹介しよう。
一つ目は、利用部門の担当者の思い違いによる「偽の問題」を排除する工夫である。日本システムウエアの小野彰子氏(ITソリューション事業本部 フィナンシャルソリューション事業部 第一フィナンシャルソリューション部 副部長)は、保守開発のプロジェクトにおいて現行システムの問題や要望を聞くとき、必ずノートPCをヒアリングの場に持ち込む。メモを取るためではない。「○○の機能がなくて困っている」といった問題が指摘されたとき、本当にその問題が存在するのかどうかを確かめるためだ(図4)。
「利用部門の担当者によって、現行システムの理解度にバラツキがある。利用部門の担当者は自分の知っている範囲で、問題・要望を挙げるから、うのみにすると後で分析するのが大変になる」と、小野氏は指摘する。
そこで小野氏はあらかじめ、現行システムのマニュアルや出力帳票などを見て、機能や操作方法を理解しておく。その上でヒアリングの場において、現行システムの問題・要望が挙がったとき、実際にノートPCを操作し、問題・要望が妥当かどうかを確認する。