利用部門の担当者にヒアリングする際、「業務やシステムに対する意見を自由に言ってください」と話を振ると、問題・要望がとりとめもなく出てくるものだ。話があちこちに飛んだり、「そもそも社長にビジョンがない」というようにプロジェクトの目的と関係ない不満が噴出したりすることもある。

 利用部門から問題・要望をヒアリングするのは、合意形成の地ならしという側面がある。しかし最大の狙いは、「プロジェクトの目的を実現する上で解決すべき真の問題や、その解決策となる新業務およびシステムを考える材料の収集」(東洋ビジネスシステムサービス テクニカルダイレクター 中村尚志氏)である。同じ人に対してヒアリングを何度も行えるとは限らないので、問題・要望を整理しながら聞くことが必要だ。

 そのために不可欠なのは、「プロジェクトの目的を説明する1枚の資料を作成し、しっかりと伝えること」(中村氏)だ。その際には「商品の自動発注という課題がありますが、これは今回のプロジェクトの範囲外です。次回のプロジェクトで取り組みます」というように、スコープ外の部分も明確にしたい。

組織図や業務フローを示しながら聞く

 現場の工夫はこれらにとどまらない。アビームコンサルティングの菊池健氏(プロセス&テクノロジー事業部 ITマネジメントセクター シニアマネージャー)が実践しているのは、会社の組織図や業務フロー図を示しながらヒアリングすることである。「相手が会社全体の目線で言っているのか、それとも自部門の目線で言っているのか、さらにどういう業務フローのどの業務プロセスについて言っているのかが明確になる」(菊池氏)。

 相手とITエンジニアが目線の高さ、対象としている部門・業務について共通認識を持つと、関係ない話題にそれることを防ぎやすいし、話の内容を理解しやすい。さらに、目線の高さ、対象としている部門・業務によって、聞き出した問題・要望を整理することもできる。